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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『上海林内有限公司 西澤 勇生 董事総経理 インタビュー!』2021/9/28

<strong><font style="font-size:19px">コロナ禍を乗り越え更なる成長をめざす </font></strong>

コロナ禍を乗り越え更なる成長をめざす

<strong><font style="font-size:19px">——上海林内有限公司 董事総経理 西澤 勇生 氏</font></strong>

——上海林内有限公司 董事総経理 西澤 勇生 氏


 
上海林内有限公司
董事総経理 西澤 勇生 氏

 

1986年名古屋市立大学経済学部卒業後、リンナイ株式会社に入社する。入社後は一貫して海外業務を担当し、94年に林内香港有限公司総経理、01年に日本帰任後、アジア・アフリカ市場責任者を務める。その後、09年に台湾林内工業股份有限公司董事長、18年から上海林内有限公司董事総経理に就任し現在に至る。

 

◆◆◆ 中国の経済成長を追い風に、順調に事業を拡大する ◆◆◆

1920年に内藤秀次郎と林兼吉の両名により設立されたリンナイは、昨年創業100周年を迎えた。加圧式石油コンロの製造・販売から始まり、その後にガステーブルコンロ、ガスレンジ、ガスストーブ、ガス湯沸器などのガス機器にいちはやく取組み、高い信頼と実績を築いてきた。

「今日では、中国、アメリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、ブラジル、イタリアなど、世界16の国・地域に展開しており、世界各国それぞれの生活文化・気候条件・エネルギー事情に適した商品やサービスを通し、世界中の人々の豊かな暮らしに貢献しています。現在グループ会社49社のうち海外法人が31社、日本国内が14社、ならびに関連会社3社(海外)で構成されています」と西澤董事総経理は説明する。

中国現地法人である上海林内有限公司は、1993年に設立された。「当社は、日本リンナイ50%、上海ガス45%、その他5%の日中合弁会社として設立され、主にガス給湯器、ガスボイラー(床暖房)、コンロ等の製造・販売を通して順調に成長を遂げてきました。中国では経済成長による所得の増加やインフラ整備が進むことによりガス機器の需要拡大が予想されることから、事業のさらなる拡大と生産効率向上のため、2015年に奉賢区に新工場を設立し主力工場の浦東工場から生産拠点を移転しました。そして、更なる売上規模拡大を見据えて、敷地内に第二期工場を建設中です(2022年竣工予定)」と西澤董事総経理は話す。


 

◆◆◆ 昨年の疫情期間中、いち早く復工復産を果たすも更なる困難に直面 ◆◆◆

西澤董事総経理は、86年にリンナイ株式会社へ入社後、一貫して海外業務に携わってきた。「初めての海外駐在は香港で、94年から2001年まで勤務しました。その間、上海リンナイの立ち上げ支援に携わりました。初めて上海の工場を訪れた際、日本の工場との違いに大きなショックを受けたことを覚えています。また、97年の香港返還に立ち会えたのは幸運でした」

2001年に日本帰国後は、アジア・アフリカ市場の責任者を務め、09年に台湾へ出向し、18年に台湾から直接に上海林内の董事総経理へ就任する。西澤董事総経理は、中国事業の責任者として更なる中国市場の開拓に取り組む中で、新型コロナの流行という前代未聞の災害に見舞われる。

昨年、新型コロナが流行した際には、疫病の影響により多くの工場で操業再開の見通しがたたない状況が続いていた。そのような中、上海林内では早くも2月中に操業再開を実現する。

「製造業の生産は在宅勤務をする訳にはいかないので、社員の安全を確保しつつ、如何に早く工場を稼働できるかが重要になります。当社では、春節休暇前からマスク、防護服、消毒液(錠剤)、体温計、使い捨て手袋などの防疫物資の調達を開始し、同時に私をトップとする6つの小グループからなるコロナ対応チームを設立し疫情期間中の情報伝達に利用することで、迅速な操業再開を実現することができました」

無事に復工復産を果たしたものの、更なる問題が明らかになる。「疫病流行の影響で、家庭を訪問して製品を設置することができなくなりました。このため数ヶ月間は全く売り上げが立たず厳しい時期が続きました。その時、運転資金として、ある程度のキャッシュを準備しておくことの重要性を再認識しました。また、働き方改革の一環として、ワークライフバランスを重視する若い世代の人材の募集や定着を促すため夜勤の廃止を決断しました。その分の生産は早番と遅番のシフトを調整することで対応しています。疫病の流行が落ち着いてきた昨年の7月頃から業績が回復し始め、今年の売り上げは、新型コロナ流行前の2019年を上回る勢いです」


 

◆◆◆ 中国市場の特色に合わせた製品と販売チャネル ◆◆◆

中国の経済発展にともない、消費者の製品に対する要求が年々高くなっている。「生活水準が上がるにつれ、シャワーの水量など給湯器の能力に対する要求が高くなり、大容量の製品に対するニーズが高まっています」

しかし、日本や他の海外市場のように給湯器の大容量化が進んでいないという。「一つの原因はガスメーターにあります。中国のマンションに取り付けられているガスメーターは小さなサイズのものが多いため、大容量の給湯器を取り付けても本来のパフォーマンスを発揮できないのです」ガスメーターを大きなサイズのものに取り替えれば、大容量の製品を取り付ける事ができるそうだ。

中国市場には、日本を含め他国とは異なる特徴があると西澤董事総経理は話す。「中国市場では、オンライン販売がここ数年増えており、昨年はオンライン販売の売上全体に占める割合が役25%に達しました。今年は3割を超えるものと見込んでおり、大きな販売チャネルに成長しています。ガス機器をオンラインで購入するお客様が多いのは中国以外の国はでみられない特徴です」


 

◆◆◆ 全国の農村にリンナイ食堂を広げたい ◆◆◆

上海林内では、積極的にCSR活動に取り組んできたが、昨年から新たな取り組みを始めている。「これまでも、全国の孤児院に自社製品を寄付する活動等を行ってきましたが、農村部には、清潔で設備の整った台所の無い地域が未だ数多く存在していることに気がつきました。そこで、そのような地域に、清潔な環境で調理のできる建物と設備一式を寄付する『林内食堂』という活動を始めており、昨年、雲南省に第一号店を寄付しました。今後も全国各地の農村に『林内食堂』を建設する予定です。さらに、建物と設備を寄付するだけではなく、定期的に栄養士を派遣し、地元の食材を用いた料理教室を開きたいと考えています」

 

◆◆◆ これからの50年、100年、中国市場で成長し続ける会社に ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の中国ビジネスの展望を尋ねた。「これまでの様に年々市場が拡大する時代ではなくなり、市場競争がますます激しさを増しています。中国では給湯器が主力商品ですが、それだけに頼っていては将来の成長はおぼつきません。中国へ進出して28年になりますが、これからの50年、100年を迎え、継続的に成長して中国市場で生き残るため、給湯器以外にもボイラーや厨房機器の売り上げを伸ばし、バランスのよい販売構成にしなければならないと考えています」


中智の感想:西澤董事総経理は、リンナイに入社以来、香港、台湾、上海と半分以上の期間を中国地域で勤務してこられました。これからの100年に向けて上海のリンナイから中国のリンナイへ更なる成長を期待しています。
「『未来は今日始まる。明日始まるのではない』未来は今、この瞬間から始まっています。だから明日ではなく今日からやるのです。望む未来に向かって、先延ばしせず今日から始めることが大切です」HR100の未来活動で西澤様から智櫻会会員への贈っていただいた言葉です。西澤様は、その言葉のとおり日々の経営においても今日を大切にし、人材の定着や若い世代の人材育成や働き方改革、そして新たなビジネスモデルの確立と、望む未来に向かって奮闘しています。