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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『林 成彬 様 インタビュー!』2022/5/30

<strong><font style="font-size:19px">同じ空の下で、力を合わせて抗疫戦に勝利しよう! </font></strong>

同じ空の下で、力を合わせて抗疫戦に勝利しよう!

<strong><font style="font-size:19px">——抗疫特別インタビュー——</font></strong>

——抗疫特別インタビュー——

現在も上海の疫情は、依然として複雑で深刻な状況が続いていますが、抗疫作業は既に夜明けを迎えつつあります。そこで会員企業を代表して、今回の封鎖管理の中で得た経験、課題や気づき、そして復工復産に向けた準備について広く会員企業の皆様と共有させていただきたく、会員特別インタビューを企画しました。複数の日本人管理及び中国人管理者を対象にインタビューを行い、特別インタビューにまとめました。


 

林 成彬 様

 

パイオニア北米本社CFO、パイオニアマレイシア現地法人COO、カシオ中国総経理等を歴任。海外事業の運営、組織構築、リスク管理等の知見を体得。2020年に上海自由貿易区30年来突出貢献企業家賞受賞。2022年から上海仲裁委員会の仲裁人に任用される。現在は専門商社の顧問を務めつつ、ジェトロ関連で日本企業の中国事業展開を支援する活動に従事。

 

今回の上海市での都市封鎖を経験し、日系企業のリスク管理において、どの様な課題を感じましたか。

承知のように中国と日本の運営環境は大きく異なり、文化と言葉の違いもあり、加えて物理的な距離も障害の一つになっているため、本社と現地法人の間のコミュニケーションはどの企業にとっても課題となっています。これまでは頻繁に人の往来があり、対面の交流で補ってきた面もありました。人の往来が途切れることにより、経営上いろいろと問題が起きていることは確かです。

事業運営面では、コミュニケーションギャップと認識のズレで最悪の場合、本社と現地との間に連携が取れなくなり、運営に支障をきたす恐れもあります。又、ガバナンス面では、本社の目が届かなくなり、現地法人の潜在的なリスクが見逃される可能性もあります。これまでは本社と現地法人の間の頻繁な人の往来自体が一つの牽制機能になっていましたが、その機能もほぼなくなりました。

 

これらの課題を解決するため、どの様な対策が有効だと考えますか。

これを機に現地法人の機能と駐在員の役割は何なのか、一度ゼロベースで考え直し、本当の意味の現地化を更に進めていくことが必要かもしれません。上海は十分このような素地があります。今後も次なるパンデミックが発生することも含めて数年単位で人の動きが滞ることを想定せざるを得ません。その際、下記のようなことを検討する必要性があると思います

事業運営面では、現地法人が本社の方針の下で自律的に運営できる仕組みを作る必要があると考えます。中でも特に、商品開発やマーケティング戦略立案の機能を思い切って現地にシフトすることが必要です。開発機能が日本にあると、コロナ禍などによる移動制約で日本と中国との距離が広がり、猛スピードで変わる中国市場のニーズを日本国内では察知できなくなるだけではなく、現地と日本の間のコミュニケーションに多大なエネルギーを費やさなければならないデメリットもあります。

ガバナンス面では、オンライン監査などの手法には限界があり、有力な現地企業や法律事務所などを活用することも推奨します。事業の運営はできるだけ現地のマネジメントに任せ、その代わりに監査機能やリスク評価・管理機能は効率的に外部リソースを使って強化していく考え方です。

上述のような事業運営、ガバナンスの仕組みを構築すれば、駐在員の役割は本社の経営理念、ビジョン、方針などの伝道師に集約されます。勿論、組織及び社員に対して強いリーダーシップを発揮できるような人材でなければならないのは言うまでもありません。

 

日系企業にとっての、上海の重要性や魅力は何だと思いますか。

上海はまれに見る国際都市であり、様々な異なった文化を大きな懐で受け入れ、それが上海の伝統と融合して独自の文化を作り出しています。

上海は優秀な人材が豊富に揃うので、事業運営場所として最も適している都市であると同時に消費地としては全国屈指の分厚い中間層がいます。90年代から上海を見てきましたが、上海は常に新しい考え方、技術、ビジネスモデルを取り入れ、猛烈なスピードで変わってきました。また金融、法律、会計監査、コンサルティングなど企業を運営するための周辺インフラが十分に整っています。

日本の中小規企業には優れた商品とサービスを持っている会社が多く、これらの企業は中国の市場を非常に重要視し、上海を中国展開の最優先候補地の一つと考えているようです。現在私はジェトロ関連で日本企業の海外展開を支援するプロジェクトに参画しており、その中でこのような傾向を実感しています。

 

力を合わせて抗疫戦を戦っている会員企業とその駐在員や社員の皆さんにエールをお願いします。

今回上海は大きな困難に直面してきましたが、必ずそれを乗り越えてまた走り出して行くと思います。日系企業の駐在員や社員の皆様が本社と連携しつつ、一丸となって頑張っていけば、上海と上海の日系企業は必ず次なる飛躍に向かっていくと信じています。