中国国内の博士課程卒業生、就職の前途は「明るい」とは言えない(2011年2月2日)
2011年2月2日
国内国外に関わらず、「博士」は高学歴の代名詞。そして、多くの人にとって博士は高学歴を意味するだけでなく、「学術研究」と高給を意味する。しかし、実際はどうなのだろうか?
学術性博士が主導権
先日発表された「中国博士資質報告」によると、中国の博士課程の学生のうち女性の比率は1998年の21.9%から2006年は35.7%に上昇した。
2006年、博士課程卒業の学生の年齢が「30歳以下」、「31歳から36歳」、「37歳以上」の三段階において、それぞれ均一に1/3前後を占めた。中国の博士は学術性が重要である。2006年を例にとると、同年博士学位を授与された35,628人のうち、専門博士学位は394人、1.1%に過ぎない。
普通大学大学院の公開された博士課程卒業生の比率は80%以上。「985プロジェクト」の大学は直接博士課程、修士・博士課程へと連続してつながっており、推薦などの試験免除により入学した学生の比率は40%以上に上る。
現在、ほとんどの大学は博士課程を3年としているが、正常に3年で卒業できる博士は非常に少なく、一般的には4年もしくはそれ以上かかっている。
脱落率ゼロの「神話」は徐々に打ち破られる
以前、中国における博士の脱落率はほぼゼロに近かった。しかしここ数年来、中国国内では徐々に「タイムアウト」の学生を脱落或いは退学させる大学が出てきた。
8月30日、武漢華中科技大学大学院は公式ウェブサイトで声明を発表し、期限通りに学業を修了できなかった307名の大学院生の退学を要求した。退学を命じられた学生のうち半数以上が 内定済みの学生や委託養成学生であり、しかも相当部分が企業の高管、政府官員で、少数の著名人もいる。
彼らは長期に渡って大学での講義を受けず、既に2、3年留年した者もいる。「新京報」の報道によると、今回の退学予定の研究生は、修士学生、博士学生合わせて307名。その中の博士学生のうち、内定済み、委託養成学生は73%を占め、修士学生のうち50%が内定済み、委託養成学生である。
昨年、南開大学が再度33名の博士学生を脱落させたことで、社会各方面において熱い論議を引き起こした。南開大学は2006年より博士学生の「脱落率ゼロ」を打ち破って3年が経過し、既に168名の博士学生が博士帽をかぶることができないまま大学を去った。
博士の主な就職先:大学、科学研究機関
調査によると、卒業後は、43.9%の博士学生が大学院での教育と科学研究業務に従事し、大学院科学研究所の10.8%と博士後の2.9%を加算すると、合計125,633名、実に60%近い博士学生が、卒業後も継続して科学研究及び教育業務に従事している。
中国の新しい発展段階への突入に伴い、各級政府国家機関(5.2%)に入る高学歴の博士課程卒業生がますます増え、合計1.1万名以上の博士課程卒業生が社会管理と社会建設の各方面に参与している。その他に、企業、施設における科学研究イノベーションもまた、ますます多くの博士学生(33,059名、卒業生の15.2%)を引き付けている。海外へ出て研究を継続する人数、軍に入る人数もまた相当の比率を占めており、それぞれ卒業生の2.9%と2.3%に達している。
博士学生の初任給が最も高い職種は研究開発系
これ以外に、「中智薪酬(CIIC Salary)」が発表した今年の卒業予定生の初任給データによると、博士学生の月給初任給は研究開発系の職種が最高で、平均6,233元に達する。市場/販売系の職業は最近では、平均3,400元に過ぎず、同じ職業で修士学生の平均給与は3,963元。
当然、博士学生の就業率がどうであろうと、博士学生の平均給与はどれも修士学生より高く、本科生より高いことも明らかである。
[辛口評価]
「企業における博士への需要は非常に乏しい」
―――Standard Chartered 銀行人的資源総監督、葉阿次氏
博士の就職先は比較的少なく、博士学生の主な就職先が科学研究機関と大学であるのがごく一般的で、社会において応用型或いは生産型企業の博士に対する需要は少ない。 一般的に、大型国有企業の博士学生に対する需要はやや高めで、学歴も比較的重視され、学歴により給与ランクが決まるとも言える。
非常に多くの民間企業、特に上場の見通しのある民間企業は博士に対し一定の需要がある。 外資系企業の学歴に対する重視度はやや低く、研究開発部門を除き、通常は学歴ではなく職務経験者の能力と業務経験を重視する。
これ以外に、博士は就職活動において往々にして専門性にこだわるので、自ずと就職先が狭まり、就職に対する期待も高く、就職コストも比較的高い。 しかし社会において依然として多くの在職者、特に施設或いは国家機関で働く従業員は、「後任争い」の際に、博士学歴者が選ばれる。これは、中国において博士学位は比較的学位を取り易く、西欧諸国のような脱落率の高さとは違う。しかも、昇級に非常に有利である。
1995―2008年博士課程卒業生全体の就職状況
[海外視点]
英国:博士は純粋に研究を行う
調査によると、英国では本科は3年、修士課程は1年、博士課程は3年学ぶ。博士課程は講義を受けず、試験もなく、純粋に研究を行う。
一般的に卒業前に、学生は第一著者として国際会議で3編、専門定期刊行物で2編の発表を行わなければいけない。一般的に指導者は2週間ごとに30分の面談を行う。博士課程には「開学時期」はなく、1年のうちいつでも学業を開始できる。
しかし、3年で予定通り卒業できる学生は少ない。
米国:ほとんどの博士学位はエンジニア
米国の民間企業に就職した場合、修士課程卒業生の初任給は6万米ドル、博士は8万米ドル。非常に多くの中国人学生が博士課程に進む前に、将来は米国の大学で教授になることを望んでいるが、事実上、中国人学生はコミュニケーション能力に乏しく、教職に就くチャンスも多くない。
工業系方面は若干良く、文化商業系方面へのチャンスはほとんど無い。よって、中国に戻り、1類大学の教授となることを希望し、大学もまた海外での教育経験者を必要としている。2、3類の大学への就職者の率はやや高い。非常に多くの、特に理工科で学んだ者は、工業界での仕事を見つけるのに1―1年半かかる。化学系の博士課程卒業生が最も仕事を探しやすい。
生活苦のため、非常に多くの米国在学の博士学生が脱落した。米国留学を選んだ修士もしくは博士学生に関して、啓徳上海支社米国部マネージャー、厳紅氏が以下のように提案する。
もしも非常に研究が好きで、大変優れた研究を行えるなら、博士学位の取得を目指しても良い。研究は余り好きではないが、研究能力を有している場合、例えば本科段階で非常に高いGPA、GREの成績を修めた場合、留学費用を納める能力のない家庭で、しかし夢と希望を持ち続けるなら、博士学位の取得を考慮することもできる。
さもなくば、まず修士課程を学び、卒業して仕事をし、自分が一体何をやりたいのか、何を持っているのかがはっきりしたら博士課程を学ぶかどうかを決めたらよい。 米国「研究と技術管理」誌の最新の報道によると、米国国家科学基金会の調査資料が掲示するには、博士学位を有するエンジニアの民間企業工業部門への就職者はますます多くなっており、しかも4年生の学校或いは大学での業務ではない。就職状況は大学での専門により大きく異なる。
例えば、91%のコンピューターソフトウェア技術博士と78%の化学技術博士は共に民間企業に就職している。同様に、公的、民間企業の二つの間には、従事する専門活動にも大きな違いがある。民間企業では、42%のエンジニアは主に開発業務に従事しており、大学で開発業務に従事している者は5%に過ぎない。
一方、工業部門のエンジニアとして基礎・応用研究に従事している者の比率は49%、大学においては76%を占める。
[米国博士学位取得ストーリー]
博士学位取得に前後平均7年を費やす、見事博士課程を終える学生は3割のみ
張錦(仮名)は、本科では英語を専門に学び、精華大学の大学院を卒業しないで、米国に渡りニューヨーク州立大学ビンガムトン校で社会学と教育学の二つの専門を学ぶ大学院生だ。
卒業後、コロンビア大学東アジア言語コースでフルタイムの中国語の教師を担当している。コロンビア大学で仕事をして3年後、今後の教師としての成長の必要性により、慎重に考慮した上で、奨学金が無いという前提の下、コロンビア大学大学院の教育コースで博士課程を学ぶことにし、仕事をしながら学ぶこと、3年が過ぎた。
自分でも一体いつ博士課程を卒業できるのか予測がつかない。 張錦(仮名)曰く、コロンビア大学では、専門基礎課程に90単位を履修しなければならず、3年かかって完成させた。博士号の試験にはエッセイの執筆が必要で、先生が4つのテーマを出し、学生がその中から3つのテーマを選んで執筆する。
1日で、1つのテーマにつき5―10ページを、たった一人で完成させなければならず、関連情報を探す時間も無い。一度失敗したら脱落となり、二度目のチャンスは無い。第二段階は、1編の非常に長い、博士論文に向けた、相応の論文を提出しなければならず、10週間のうちに前半3章を完成させる必要がある。
その後、先生のCONTRACTというサインをもらって初めて博士論文研究段階に正式に進むことができる。前後平均7年を費やし、やっとこの専門の博士修了証書を手に入れることができる。博士の脱落率は比較的高く、博士課程を見事終えることができるのは学生のわずか30%で、理工科の大部分の学生はあえて修士学位の卒業に留めている。
掲載メディア:新聞晨報