ホーム > HRニュース > HRニュース > 中国HRニュース > 「病欠」が職場に訴訟をもたらす(2013年1月11日)

【判例】「病欠」が職場に訴訟をもたらす(2013年1月11日)

2013年1月11日

事例:

 李某は2005 年1 月1 日上海のA社に入社し、販売部門を担当、勤務地を天津市と定め、2008 年1月1 日より2010 年12 月31 日までの労働契約を結んだ。李某は職期間の長い高級幹部とのコミュニケーションが上手く行っておらず、販売成績も並であったため、A社は2010 年6 月李某との協商を変更し勤務地を上海と定めた。李某は上海への転勤を望まず、天津周辺での勤務希望を申し出たが、A社は同意しなかった。

 この後、A 社は李某に対し、上海での赴任と配置転換について協商すべく何度も催促したが、李某は拒絶し、併せてA社の勤務地転換に対するプレッシャーから、頸椎の病気が再発したと主張した。李某はA社へ「疾病専用印」の捺印された「診断証明書」を郵送、審査を経ていないにも関わらず2010 年7 月末より連続6週間病欠した。A社は2010 年8 月3 日、李某へ「上海への転勤通知書」を出し李某へ労働契約の履行を求めたが李某はこれに応じず、8 月25 日、重大な規章制度と労働契約違反により李某を解雇した。李某は解雇を無効であるとして、労働仲裁を申し立てた。

 

焦点:

1、A社は一方的に労働者の就業場所を調整できるか?
2、職場の問題に対抗した病欠に法的リスクはあるか?
3、「疾病専用印」を捺印した「診断証明書」は病欠と認めるに妥当であるか?

 

分析:

  使用者は原則として一方的に職位や業務場所を決定する権利を持っていない。関係規定では、業務場所は労働者が労働契約を実際に履行する場所であり、労働契約の核を成す内容なので、労働者はもちろん使用者も労働契約に記載のある業務内容と業務場所の規定を遵守しなければならない。労働契約の約定は全面的かつ実際に履行しなくてはならず、違反行為や随意変更を行ってはまらない、と定めてある。もし A 社が労働者と協商し合意に達したならば、勤務場所を変更できる。但し合意を見ない状態であれば、元の約定どおりに契約を履行すべきである。

 当該事例中、李某は使用者との「労働契約」中、病欠について「乙方(李某)は甲方(A社)の許可を経て、又は県級以上の医院の診断書の提出をもって、病欠扱いとする。これをしなかったときは、無断欠勤として処理する」と規定している。労働契約法は労働者の病欠について必要な手続きを特に定めていない。国は労働者の病欠手続きについては企業の「規章制度」による、としている。

 実際、労働者が疾病したときは、会社に告知した上で病欠の許可を得るべきである。もし会社の許可が得られないときは、労働者は病院で検査した上で病状を確認すれば、病院は診断証明書を書かなければならないから、それをもって会社へ病欠を届け出れば良いのである。ゆえに、この制度には運用性があり、かつ何ら合法的権益を侵しておらず、合法性を持つ。

 李某が病欠を申し出た際会社に郵送した診断証明書に「疾病専用印」しか捺印されておらず、「診断証明専用印」が捺印されていない点については、該「診断証明書」下方に「専用印なき証明書は無効」と記載されている。また同院はA 社の調査の際提出した文書で「本院『診断証明書』の疾病専用印は病欠を建議しているだけで、診断内容を証明しているものではない」と述べている。このことから、李某の提出した診断証明書は休暇を推奨しているだけで、診断証明書ではないと言える。

 李某が有效な診断証明書を提出しておらず、会社の許可が無いまま連続で病欠することは規章制度及び契約に反し、無断欠勤となる。

 

提案:

※労働者の病欠が疑わしければ、病院に再検査を依頼する。

 実際上は、病院の「病欠建議」が乱発されているケースを少なからず見かける。しかし「診断証明専用章」は病院が単独で管理するものであり、明確な疾病診断手続きの無いときは診断書及び「診断証明専用章」を手にすることは出来ない。

 ゆえに会社の要求する病欠の「診断証明書」提出においては、労働者側にとって明らかに難度の高いものとなる。実際には、病院との縁故などにより嘘の病欠証明が出されることも少なからずあるが、この場合使用者は病欠証明を再審査する権利を行使すべきである。使用者は労働者の病歴、病欠証明、医療費の領収書などについて病欠の真実性を審査することができる。労働者の病欠が疑わしいときは、労働者に再検査を求める事もできるが、法に基づく規章制度に基づいており、かつ再検査を指定した病院に公平性、合理性及び利便性を欠いてはならない。

 

※労働者の疾病にヒューマニスティックな対応を

 それでは、労働者が「診断証明書」を取得できなかったとき、本当に病気であっても休暇を取ることはできないのか?

 全ての疾病は病院において明確に診断されるものである。もし労働者の疾病が本当であるにも関わらず、企業が労働者に出勤を求めれば、労働者の病状が重くなり、最終的に使用者側に不利益が及ぶことになる。ゆえにこの角度からも、ヒューマニズムに則った病欠管理は最終的に労使双方の合法的権益を守ることにつながるのである。

 

中智HR 法律咨询部
HR Legal Consulting Department
地址:上海市虹桥路 1 号港汇中心一座45 楼 200030
45/F, 1 Bldg., Grand Gateway, 1 HongQiao Road, Shanghai 200030, China

电话(Tel):+86(21)54594545 传真(Fax):+86(21)64470290