ホーム > HRニュース > 中国HRニュース > 在中日系企業の業績効果管理問題における根本原因の簡易分析(2013年3月15日)

【人事アナリスト分析シリーズ】在中日系企業の業績効果管理問題における根本原因の簡易分析(2013年3月15日)

 在中日系企業は長年の実践経営を経て、中国国内従業員の考課システムをあらかた確立していると言える。しかし実際の運用において、多くの日系企業が業績考課の形骸化、評価の均一化などの問題に直面している。現在在中日系企業の抱える考課における困惑について、本文では日本特有の経営理念と企業文化から、日系企業の中国における実際の状況までを分析し、問題の原因究明を試みようと思う。

日系企業特有の経営理念と企業文化:

 終身雇用制度が日系企業の伝統的な雇用形態であり、日本の成功モデルにおける4大支柱の一つであると呼ばれている。その核心は会社と従業員の長期的で(大学を卒業して会社を退職するまで)穏便な労働関係であり、それは両者の間に家族同然の相互信頼関係を確立している。企業は往々にして新卒生から新入社員を選抜し、長期的な学習機会を与え、同業種または同地域外での業務訓練を経て、従業員の能力を徐々に高めていくのである。(他国企業が)ある短期間内の業績考課をもって企業のコストと従業員の生産性を推し量るのに対し、日系企業は従業員の忠誠心を重視し、従業員をより寛容に受け入れている。

 同僚は長い年月共に働き、特に日系企業の残業文化と「飲みニュケーション」という習慣は、従業員が同僚と過ごす時間を家族と過ごす時間よりも長いものにしている。上司は長期的な観察とコミュニケーションにより、従業員の状況を十分に把握している。家族同士はお互いを数字の指標で推し量れない。企業という名の家族の一員として振舞うことを望み、評価しているのである。

 日系企業文化においては「和」こそ最も尊いものであり、個別の判断と貢献より、従業員が互いに協力しあう団体精神を重視する。日系企業でたいへん流行している「ほうれんそう」がそれを鮮明に示している。日系企業には業務や階級の相違こそあれ、はっきりとした「職、権、利」の境界が無く、上下間や同僚間での「報告」「連絡」「相談」によって情報を共有し、共同で討論、策定を行うことにより業務の正確性を保障している。これはまるで一つ屋根の下で共同生活を送る家族のようである。家族の中で演じる役割は違えど、双方間の職責は明確でなく、全員が意識して家族のために努力を尽くすのである。

日系企業が中国で直面している状況:

 改革開放からあっという間に30数年の月日が経過した。特にここ10年来、国有企業の改革、民間企業の台頭、外資系企業の上陸に伴い、中国は非常に早いペースで外国企業の管理理念や思想を学習、吸収してきた。特に欧米の現代的管理理念と思想の影響は最も大きく、それに伴い、特に欧米の価値観や文化が強烈な勢いで中国国内に流れ込んできた。中国は現在未だ急成長期にあるが、その成長は不均衡であり、貧富の格差も拡大を続けている。大衆は欧米の「成果主義」思想を更に受け入れようとしており、企業が明確な尺度をもってする評価により、自身の価値を判断するのである。

 中国経済の急速な発展に伴い、就業の機会も絶え間なく増加している。特に各企業とも業務経験者の加入を切望していることは、求人市場を活性化させている。当該企業と従業員には考課管理モデルが通用せず、有効な考課測定基準を設け、一定期間内に満足を得られないと訴える従業員には、離職や他企業への栄転を図らせるのである。

 在中日系企業は、中国の労働法と就業習慣を元に、現地で雇用した中国人に日本と同じような終身雇用制を導入しておらず、期間の定めのある労働契約を締結する方式を採っている。中国の急速な発展に対するニーズと、経験者(即ち中途採用者)雇用を考慮すると、従業員の経験や知識が企業にもたらす価値をもとに、他の中途採用者にもその価値に対する明確な査定基準を設け、その知識と経験に相応の合理的な報酬を支払うのが望ましい。

 遺憾なことに、現在在中日系企業は管理における本土化がまだ進んでおらず、特に日本本社から派遣された駐在員が依然現地企業の決定権を握っている企業が大多数を占めている。従来の管理慣行と中国における業績考課管理経験の不足により、現在在中日系企業は依然日本的な考課方法をメインに考えている。しかし日中の語学的障害、文化的差異、信頼の不足などにより、日本の管理者(評価する側)と現地従業員(評価される側)との間にコミュニケーションや交流が無く、雇用期間の相対的短期化(駐在員は帰国し、現地従業員は離職する)も相まって、日本本社と同じような家族然の密接な接触や協力関係の構築ができず、ただ日本人による日本的な感性で評価が決まってしまう。日本本社からの駐在員は業務内容、経歴、知識、管理の巧拙、業務習慣などの背景がバラバラで、駐在員の交代によって従業員評価に差異が生じ、考課、管理の際客観性、公平性、公正性に一定の影響を与えている。

 このことから、在中日系企業の考課管理において遭遇する問題の根本的な原因は日系企業の管理方法と中国側の実情との間に差異があることである。日本本土で成功した企業管理方法と文化は、中国では水に合わず、通用しないのである。

 在中日系企業は、製造業はもちろん販売、貿易その他の企業においても、中国で成功を収めたいと考えるのならば、中国の状況を熟知した優秀な中国人従業員の存在が必須である。在中日系企業管理者がその管理理念を変化させ、中国の実情に合った考課体系を構築し、現地従業員の評価内容、基準、結果などを共有し、従業員との共通理解を確立すること。それが優秀な中国人従業員を引き寄せ、企業が長期的発展を約束するために必要な方法なのである。

中智日企事業部
陳潔瑋