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戦略が報酬を決め、報酬が戦略を動かす

戦略が報酬を決め、報酬が戦略を動かす(2013/5/15):

 企業の成長戦略とは企業の経営方針と目標を指し、それは企業がどこを目指し、市場でどのような商品を売り、最終的にどの程度の規模になるのかを決定する、企業の指導方針を言います。企業の人事制度、報酬制度は全て企業戦略実現の為にあるのです。企業の成長戦略は人事制度と規模、報酬支払システムと規模によって決定づけられます。

 企業の成長戦略策定後に人事部が考えるべきことは、戦略を実行する人材にどのようなバックアップを行い、戦略実現の為の良い人材を如何に確保、ということです。人材確保の為に最も重要なのは、合理的な報酬制度です。ゆえに、報酬制度の良し悪しは、企業戦略の成功に大きく作用します。

 報酬制度をどのように企業の成長戦略へ組み込むかについて、我々は5つの点が必要であると見ています。

 第一に、企業の報酬制度には企業の成長戦略を盛り込むことです。企業の報酬制度はその成長戦略とリンクしていなければならず、成長戦略と業務経営戦略の実施を有効に推し進めなければなりません。適切な報酬戦略を持つ企業組織が競争力を維持できるのです。例えば、今年度の販売戦略が販売量の増加であるならば、販売量に重点を置いて営業の業務査定を行い、もし売り上げを伸ばしたければ、販売額に重点を置いて業務を査定し、もし新商品の告知を行いたいのならば、固定給の割合を増やし新商品の売り上げに基づくインセンティブを与える、という具合です。

 同様に、企業の発達段階によっても報酬戦略を変えるべきです。創業期には長期在籍者に有利に、成長期にはボーナスの比率を高め、成熟期には短期的長期的な奨励を織り交ぜ、衰退期には人件費を抑制する、という具合にすれば良いでしょう。報酬制度は必ず企業の成長戦略と足並みを揃えていなければいけません。さもなくば、企業運営に支障が出ることになるでしょう。

 第二に、報酬制度には外部との競争力が無ければなりません。従業員は往々にして手にした賃金を同業他社と比較したがるものです。もし賃金を多く手にできたならば満足感を覚え、少なければ不満を感じるでしょう。従業員の報酬満足度はその業務効率に影響を与えます。この他、新卒生が企業を選択する際、報酬は重要な要素となります。大抵の場合、招聘企業の待遇と同業他社の一般的な待遇を比較して、より賃金の高い会社を選びます。従って、報酬制度においては定期的に調査を行い、報酬水準、人材の引き留め、奨励、優秀な人材の獲得には常に気を配らなくてはなりません。近年、上海では12の業種を網羅した白書「中欧  博\捷薪酬指数」が発表されています。これはホワイトカラーの初任給からベテランの賃金までを一年に一度発表しているもので、科学的裏づけがあり十分な権威を持つものです。この指数を参考にすれば、企業の報酬を定め、報酬過多から来る人件費の上昇、利潤の減少を避けることが出来ます。また報酬過少から来る、人材不足や人材流出による企業の長期成長へのリスクを避けることができます。

 第三に、報酬制度には公平性が無ければいけません。従業員は賃金の外部比較を好むだけでなく、内部比較も好みます。もし業務を多くこなしているにも関わらず賃金が少なければ、自然と不満を抱くようになります。「“不患寡而患不均”」という言葉は企業において非常に大きな力を持ちます。従って、人事査定は必ず科学的根拠に則り、多く価値ある貢献をした従業員の報酬が自然と高くなり、そうでない従業員はそれなりの報酬を得るようにしなければなりません。

 多く貢献すれば、より多く報酬が得られる。公平公正に人事査定を行うだけで、十分な奨励作用を得られるのです。戦略実施過程においては、必然的に論功行賞を行わなければなりませんが、公平さ、公正さがあって初めて従業員は安心して力を発揮できるものなのです。

 第四に、報酬制度には科学的合理性が無ければなりません。報酬制度設計においては、企業の支払能力と投資回収率を考慮しなければなりません。高待遇は優秀な人材を得るのに替え難い力を持つのは確かです。しかし、企業の報酬基準はその企業の体力や必要な人材が、市場においてどの程度の価値を持つか等具体的な条件を見て定めるべきであり、高待遇を一辺倒に強調すれば良いというものではありません。報酬制度は純粋に金銭のみを提供して終わりではなく、金銭以外の要素を織り交ぜ、自社選択性と人材吸引力を持った全面的な報酬制度を確立し従業員へ提供しなければなりません。

 報酬支払においては、違う職種には別の報酬基準を用いなければなりません。幹部人材について、主戦力となる人材には市場相場をリードするほどの報酬を支払い、補助的人材には市場相場程度の報酬を支払う、特別な人材には持ち株による業務協力という方法を採る、といった方法を採る事も出来ます。

 人事コストの投入には科学的、合理的フィードバックが無くてはなりません。企業の経費中、人事コストの占める割合は大きく、そこへの資本投入が作用することは、企業の成長戦略における最終的な財務的目標達成に大きく貢献します。

 第五に、報酬制度を軽視してはなりません。上述の4要素を周知できた状況下では、制度を公正厳格に運用できるかが肝要となります。もし報酬制度が確立した後それを執行せず、朝令暮改、竜頭蛇尾、依怙贔屓といった事があれば、その制度は意味の無いものになってしまいます。ゆえに、報酬制度の確実な執行は非常に重要なものとなります。報酬制度の実施には専門性のみならず、企業がそれを重視していることが必要なのです。

 一旦決定した事項は、必ず執行しなければなりません。個人的な権限で公平性、公正性を損なってはなりません。

 これらのことから、企業の成長戦略とは報酬制度の方向性にあり、報酬制度の制定と実施は成長戦略から外せないということが見て取れます。逆に言えば、報酬制度は企業の成長戦略の成否を占う上で重要な要素であるということです。成長戦略と報酬制度の整合は、優秀な人材を引き留め、外部の優秀な人材を獲得し、成長戦略実現の為の人材を保障するだけでなく、企業の運営効率を高めることにも繋がるのです。