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日本式人事管理モデルの中国における挑戦と変遷(2/4)(2013年7月22日)

日本式人事管理モデルの中国における挑戦と変遷(2/4)(2013年7月22日):

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(1)終身雇用

 終身雇用は日系企業の人事管理モデルにおける重要な柱である。この制度の下で、従業員は一般的に退職まで同じ会社で働き、企業も簡単に従業員を解雇することはできなかったのである。経営が困難なときは、採用抑制と残業の減少、賃金値下げ、希望退職者募集などの手段を用いて非強制的リストラを行うのである。

 日本の大企業、中企業では一般的に終身雇用制が施行されており、名目上終身雇用を施行しない企業は存在しておらず、彼らは一般的に雇用関係の安定を重視している。日本において、終身雇用制は20世ェ~90年代以来困難に直面しているが、現在もなお総じて終身雇用制が普遍的に存在しており、その根本は揺らいでいない。筆者の日本企業駐在員へのインタビューにより、このことが事実であると証明された。取材に応じた駐在員の方は、日本では基本的に人材が流動することはなく、一つの会社で勤め上げるのが一般的で、名目上終身雇用制は失われているが、実際は未だ終身雇用前提となっていることを我々に語ってくれた。

(2)年功序列

 年功序列は日系企業の人事管理モデルのもう一つの重要な柱である。新入社員は入社後、勤続年数に合わせて賃金が上がって行き、同期間の賃金差は少なく、年功序列は昇進においても反映されている。年功序列と終身雇用は互いに支えあう関係になっており、企業と従業員間の長期労働関係と従業員の終身奨励を維持するものであった。

 近年、年功序列の弊害を克服するために、日本企業は成果主義指向を強めつつある。しかし、年功序列の理念を重視する傾向は日本社会に根強く存在している。日系企業駐在員はインタビュー中、日本には未だ年功序列が存在しているため、成果主義を導入し若年層からベテランまで成績優秀者の昇進をできるだけ早めようとしている。しかし、協調的な空気を保つ為に、企業はベテラン従業員に新しい肩書きを与えたり、彼らを休業させ学習の機会を与えるなど、更なる一手を打たなければならなくなっている、と話している。

(3)企業内組合

 企業内組合はずっと終身雇用と共にあり、日本企業の穏便な労使関係の維持の為に重要な役割を担ってきた。いわゆる企業内組合とは、企業を単位とした労働組合であり、それは企業に属する。ゆえに、日本企業の労働組合は労使双方の交渉において、より企業全体の利益と長期的発展を考慮し、企業側と協力的な決定を打ち出すことが多く、対立的な労使関係を持たない。企業内組合は企業経営管理業務を行うと同時に、労使間の協調、協力関係の形成を容易にし、企業の生産を確保する存在なのである。

(4)従業員による管理と集団決議

 (日本企業は従業員による管理と集団決議を重視する。従業員による管理の意味するところは、企業にもその傾向があるが、従業員の総意でない意思決定は、事を成すにおいて不都合であると考えていることである。ゆえに、日本企業において従業員は企業の経営状況を必要な時に知ることが出来、また重大な決定においても意見を発することができるのである。経営者は重大な決定の前に、下部及び全体の従業員の意見を伺い、その総意の下最終決定を下すのである。この決議方法は時間がかかるものの、一旦決議されれば迅速かつ徹底してその施策を実行することができるのである。

(5)個人職責の曖昧さと団体精神の強調

 米国企業と違い、日本企業には個人レベルでの明確な職責が無く、多くの企業において部署の職責はあっても職位の職責というものが無い。日本企業の管理対象とは、事実上集団及び部署であって個人ではない。ゆえに、経営責任も集団にあり、ある学者はこれを日本企業的社会責任制と名づけている。個人の職責が明確になっていない状況下、日本企業は集団または部署の利益を優先させる団体精神と集団意識をもって、全体の生産効率が保障されると強調している。日本企業の新入社員は入社一日目、団体訓練を受けなければならないのである。

(6)企業内訓練制度

 日本企業は従業員教育と養成を特に重視しており、従業員教育と養成の進捗が経営管理の重要な要素となっている。日本企業の訓練制度は終身雇用、年功序列、内部昇進、専門知識、同業他社への転職禁止などの要素から発生した職務制度なのである。訓練内容は、技術など「ハード」に属するもののみならず、企業内部の管理制度、人間関係や行動規範などの「ソフト」に属するものにまで及び、その業務専門の知識を養成される。この訓練方法によって、集団内部における配置転換訓練は多方面において応用が効くのである。

(7)従業員の忠誠度を重視

 西洋の明確な職位責任区分契約式管理と違い、日本の人事管理モデルの基礎は穏便な人間関係を基礎としており、此企業管理者はよくあらゆる方法で従業員と家族のように乾杯を交わす。盛田昭夫氏は、企業の主要な使命の一つは企業と従業員の関係の醸成であり、組織内にファミリーのような雰囲気を作り、従業員と苦楽を共にし運命を共にしている情感を出すことであると認識している。この考え方は大部分の管理者の思考を示していると言っていいだろう。総じて、終身雇用、年功序列、従業員による管理、企業内訓練、団体精神、精神的激励などは日本企業の人事管理モデルの核心的内容なのである。これが新卒主義、内部昇進、配置転換、退職金制度など一連の制度を取り決め、完全な日本企業人事管理モデルを形成して行ったのである。

 これは長期的視野に立った人事管理モデルは異なる制度の間で互いに補完しあい、補助しあい、企業内部の完全な采配システムとなったのである。同時に、この人事管理モデルと日本経済、社会環境は密接に結びついており、管理システムと縦割り社会を実現しているのである。90年代後期以降、一部日本企業は徐々に欧米の制度、例えば業績評価、業績ボーナス、職位責任などを取り入れ始めているが、全体から見れば日本の人事管理モデルは未だ普遍的に存在しており、欧米の制度は日本企業の中でまだ浅く採用されるに留まっている。例えば業績評価では、一見欧米企業と同じであるが、実際には各個人の給与、ボーナスに大きな差異があるわけではない。

 ここに、日本企業の人事管理の特徴の一部を先に皆様にお伝えした。引き続いて、現在の在中日系企業の伝統的管理理念の変遷とその直面している課題について、分析を試みようと思う。

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