ホーム > HRニュース > 中国HRニュース > 【判例】賃金歩合制に関する紛争の分析(第二回)(2013年7月22日)

【判例】賃金歩合制に関する紛争の分析(第二回)(2013年7月22日)

はじめに:

 現在、「歩合制」は報酬支払方法の一種としてあらゆる業界で広く適用されている。「歩合制」自身の柔軟性と不確定性は多くの使用者と労働者に利益をもたらしている。しかし、「歩合制」は労使関係にある双方から見て「諸刃の剣」であり、時として紛争の火種になるものである。

 統計によれば、法院で受理された労働争議中、歩合制による紛争の比率は絶え間なく上昇している。歩合制に関する労働争議の審議において、労働者は常に弱者であり、使用者への歩合制賃金支払い請求訴訟の多くは法院の支持を得られていない。よって、労働者が労働契約を締結、履行する上では「歩合制」による被害が及ばないよう、注意を払わなければならない。

案例二:インセンティブが支払われない

 黄さんと潤和公司との間には労働関係が存在していた。黄さんは、潤和公司で中天公司を利用して卓越公司との「工程建筑請負契約」を250万元で成立させており、潤和公司の「販売員目標管理方法」第三条の規定により、潤和公司は契約金額の3%を出来高払いとして支払うことになっている、と話した。

 潤和公司がこの支払いを拒否したため、黄さんは労働争議仲裁委員会に出来高の支払いを求めて提訴したが、仲裁庭はこれを棄却した。これを受けて、黄さんは法院へ提訴した。

 法院は、黄さんの出来高契約は全て中天公司を通して卓越公司と結んでいるが、黄さんと中天公司の間には労働契約が存在していない。潤和公司と中天公司は投資関係にあるが、どちらも独立した法人であり、潤和公司は直接にその利益を得ることが出来ない。かつ、黄さんは潤和公司と中天公司を混同しており、潤和公司が実際に契約履行による利益を得たことを証明できていない、とし、黄さんの出来高支払い請求を棄却した。

案例分析:

 黄さんが潤和公司より相応の報酬を得られなかった原因は、黄さんの行為が双方の労働契約の範疇を超えていたからである。この案件は、労働者の出来高賃金受け取りに関し明確な規定を設けることが、労働者の権利保護の為非常に重要な意義をもつことを示唆している。

 出来高制は使用者と労働者双方の協定によるものであり、ゆえに出来高の名目、比率及び支払方法は大きな弾力性を持つ。しかしこの弾力性は後々発生するさまさまな問題の種となっており、特に労働紛争となったとき労働者にとって不利に働きがちである。

 使用者と労働者が出来高払いについて取り決めを交わすことは審議において重要な根拠となる。ゆえに取り決めの存在及び明確な規定の有無は労働者自身の合法的権益の保護に大きな影響を及ぼすのである。