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【判例】継続就業している退職者の法的地位(2013年10月23日)

案件:

 姜某は某社を退職した職工である。2008 年5 月16 日、姜某は某物業会社へ就職し守衛を務めていたが、2008 年から2009 年の間双方は労働契約を締結していなかった。2010 年1 月28 日、双方は労働契約を締結した。就業形態は3交代制で、姜某は毎週6日出勤し、1日休むというローテーションであった。2008年6 月より2009 年12 月まで、物業界者は姜某へ毎月基本賃金520 元を、2010 年からは750 元を支払っていたが、上述の期間、時間外勤務の際その手当を支払われていなかった。

 2010年11 月11 日、物業会社姜某の解雇を决定した。2011 年1 月6 日、姜某は労働仲裁委員会に仲裁を申し立てたが、仲裁委員会は姜某に申し立て資格が無いとして却下した。その後、姜某は法院へ提訴し、物業会社へ勤務中における最低賃金との差額と時間外手当の支払いを求めた。

 姜某は使用単位とのこのような関係において、法的保護を受けることが出来るだろうか?

解説:

 《労働契約法》の規定では、労働者が年金受給者となったとき労働契約は終了することになっている。このように、退職者は法律上労働者としての主体資格を失っていることになる。同時に、2010 年9 月14 日最高人民法院《労働争議案件審理への活用法律における若干問題の解釈(三)》では、「使用者とそれに使用される年金受給者および受給資格者の間で労働争議があり、人民法院に提訴があったときは、人民法院は労働争議として処理する」とある。ゆえに、退職者の再雇用における労務関係と労働関係の境界は全く別のものであると言える。

 労働関係とは使用者が労働者を使用し、労働者が使用者の指揮命令下において労働を提供し報酬を得る権利義務関係を指す。また労務関係とは、2つ及び2つ以上の平等な主体が、労働契約により民事的権利義務関係を形成することを指す。労働関係において使用者は法律法規及び地方条例に基づき労働者の社会保険、賃金支払、同一労働同一賃金の原則、最低賃金基準などの規定を遵守しなければならない。また労務関係においては当事者の一方がもう一方に対する社会保険に関する義務を負っているわけではなく、報酬は完全に双方の協定によるものでその権利義務は公平平等の原則に基づいているため、報酬については約定した額が優先される。

 なので、退職者の雇用については、公平で責任を明確に記した労働契約を合法的かつ有効に締結しているかがカギとなる。協議書内に業務内容、賃金、医療保険、労災、待遇、医薬責任などの権利義務について列挙してあれば、労働紛争が発生したときにその内容が優先され、危険性の大きい業務について使用者に民間保険をかけるよう要求することができる。このように、企業は自身の投資リスクを転換させ、退職者再雇用の後願の憂いを断つことが重要なのである。

 しかし、退職者再雇用の現状はいささか複雑である。ある企業では職工が法定退職年齢に達する前に、コスト削減のために早期退社を促している。またある企業では退職を控えた職工の再就職を支援している。関係司法解釈では、このような職工が新たな職場で形成するのは労務関係ではなく、労働関係であるということになる。