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【寄稿】日系企業の用人姿勢に学ぶ(2)(2013年12月25日)

【寄稿】日系企業の用人姿勢に学ぶ(2)(2013年12月25日)

2、団体行動の重視

 私が従事したことのあるトヨタの電気部品製造企業では、協調こそが最大の特長であった。協調の基礎は相互信任であり、信任が隣人への責任と協力を生むのである。では、彼らは何を根拠に信任しているのか?それは「公平」である。企業が公平な世界を作り出していると従業員が感じたとき、彼らは奉仕の精神を発揮するのである。公平さは信任を生み、従業員に自覚ある行動をもたらし、企業に成功という名の重しを乗せるものである。

 日系企業では、ライン工の收入と工場長、科長の収入とはそれほど大きな差が無く、基本的に2倍程度である。それは従業員にとって公平な世界であり、会社では基本的に出来高賃金制をとらない。彼らは、従業員が出来高賃金制によりボーナスを得ることは彼の業務を肯定しているに過ぎず、その他の忠誠、業績、イノベーションを評価しているわけではないと考えている。もし経営者が従業員について「労働生産性を向上させてくれれば他はどうでもいい」と考えているのならば、従業員は生産性外の重要な業務をいい加減にこなすようになるだろう。例えば、イノベーションや奉仕の精神を失えば、企業内部に無秩序や相互排除をもたらし、最終的に商品の品質が犠牲となるのである。日系企業からすれば、商品の「B品率の低さ」は当然のことであり、絶対的目標の達成も当たり前のことなのである。ゆえに、労働生産性向上に関わる活動の奨励は初めからごくわずかである。また賃金戦略においては、個人に対し誰よりも賃金を得るよう奨励していない。なぜなら特定の従業員、特に高級管理者層を必要以上に奨励することは、企業内の友好ムードに水をさすと考えているからである。従業員に対する賃金戦略は平等を重視し、個人差を強調しないようにしている。

 それでは、彼らは何を鼓舞し、奨励しているのか?相互協力による団体作業を奨励し、団体精神を鼓舞しているのである。この点にこそ、奨励制度の公平性及び方向性の問題が存在しているのである。

 従業員に公平な会社とするために、日系企業はまず職位をある一人に固定せず、度々配置転換する。異動先の業務になじまないときは更に配置転換する。また、従業員に自身の能力を最大限に発揮させる業務を割り当て、その好奇心、チャレンジを呼び覚ます。更に、能力・特長の養成や訓練機会は従業員一人一人に及ぶ。これらは従業員の尊重と訓練機会の保障を同時に体現している。

 日系企業がその考課において最も重視するのは従業員の忠誠度(奉仕精神の奨励)、従業歴の長さ(長期勤務を奨励)及び改善提案採用率(イノベーションの奨励)である。中国国内企業の団体組成においてよくある過ちは、業務における協力さえあればそれでOKであると考える点である。しかしてトヨタ管理モデルの肝はアイデアの共有による相乗効果であり、各従業員には恐れずに自身の考えを述べることができるのである。このように、従業員全体で各自が思いもつかなかった戦略を吸収、消化することで、組織の思考量を数倍に広げることができるのである。

 新入社員が同僚たちとの共同業務に当たる際は、自身の行うべき業務に気づいて、準則に則り業務をこなす。日系企業では、従業員や問題に対して懲罰を下すことがない。日系企業は「従業員に気持ち良く仕事してもらう環境づくり」の追求を第一としており、ゆえにこのような不文律が存在しているのである。「朝は訓示を垂れず、従業員を鼓舞せよ!」言い換えれば、彼らは従業員を酷使すれば、彼らの不満は商品の上に吐露されると考えているのである。

 「日本のものづくり」が最先端を行くのは、必然なのである。

3、家庭的雰囲気の創造

 商品品質の安定は従業員の安定が決め手となる。また企業内で家庭的雰囲気を醸し出す事で、更に従業員の尊重、認可欲求を満たしているのである。なので、日系企業は従業員の業務条件、安全保護、「空気」を非常に重視するのである。我々がよく知るところの5S管理は、従業員のために1件の「暖家」を作り出しているのである。このような業務環境において、従業員は自然に企業の創業理念、伝統、使命及び目標を理解し、また自然に向上心が湧いてくるものである。

 日系企業においては、どの部署出身の管理者であろうが、他人を解する能力と情熱があればそれで良いのである。

 日本の中小企業の社長は、往々にして早い時間から出勤し、工場の入り口で従業員を出迎え、出勤してきた従業員に声をかけるものである。もし従業員が遅刻してくれば、声色を変えて叱責や訓示を行なうことなく、「今日は家で何かあったのか?気にするな、何かあったら早く言えよ。会社側で何とかできるかも知れないからな!」。この簡単な一声で、従業員は企業の温情を感じるのである。従業員の結婚、子供の生誕や葬儀においても、企業は贈り物や社長の弔辞を送るのである。もし彼らのチームが好成績を挙げたときは、企業は従業員への表彰以外に、彼の家族を祝福し、謝辞を述べるのである。

 私が日系企業に感じるのは、上下社員間の「家庭的」な温かい雰囲気である。従業員がこれほど関心を持たれれば、誠心誠意業務に打ち込み、このように考えるだろう。「私たちがこの商品を売る際に100%品質を保証するためには、今ここでB品をゼロに押さえなければならない」。「更に良くするためにはどうすればよいか」という思考は堅牢な意思となっている。仕事への興味はイノベーションの源泉となり、従業員は多くの業務改善案を生み出し、企業へ心から忠誠を誓うようになるのである。

 日本の製造業はその経営において「従業員の慰留」を「従業員が生きていくための経営」へとシフトしていった経歴がある。従業員は一旦企業に採用されると、その各種社会保険は国家規定と会社の承諾によって処理される。従業員は企業に対し自然と強烈な依存心を抱くようになり、企業を個人生活の拠り所、また生涯学習の基地と見做すようになる。ゆえに、従業員の利益と企業は一体化し、企業と従業員はまさに運命共同体となっているのである。従業員個人の利益と企業の利益は綿密に関連しているので、従業員は企業内部の資本分配に大きな関心を持つようになり、また企業の発展と成長に注目するのである。逆に言えば、従業員はこの場所でより安心して働くことを望むようになる。日系企業能が従業員を慰留する上で頼りにするのは、態度、情、事業である。

 私が更に協調しておきたいのは、企業が「相性」を見て人を用いるという点である。もしただ学歴のみを重視すれば、招聘した人材はその力を発揮できず、彼が会社を好まなければ、その会社にとっては資本の浪費以外の何者でもない。もし一般的な人材を招聘し、彼が会社に対し好意を抱いたならば、彼は業務に尽力することだろう。なので、人材の招聘や従業員の慰留においては高給だけでなく、企業の経営スタイルや管理者の決心、熱意や誠実さがカギとなるのである。事実上、従業員の多くは「社長が素晴らしい」からこそ会社に留まっているのである。

4、従業員の管理参加

 私がかつて面識を持った企業では、マk月経営状況を公表しており、各個人は会社の利益に重大な影響を及ぼすような問題や策定に意見を述べることができた。例えば私は、車間看板管理者たちが「我々が生産しているエアバックの出荷価格は17.68万円だが、不良品が顧客の手に渡ったときは、販売価格の17.68万円だけでなく一部の自動車製造費も補償べきだ」と意見するのを見たことがある。

 日系企業において、重要な問題は一般的に従業員の反応と討論を経て、意見の一致を見てから実施される。また、「マイノリティがマジョリティに服する」ようなことは断じてない。例えばトヨタ自動車では、リコールが起き予約が減少し、取引先企業との取引も途絶え「工場の一つを閉鎖すべきか否か」という難局に陥ったことがあった。工場閉鎖は1000人の従業員が職を失うことを意味する。この時、経営者は利他的精神、慈愛の精神を中核に据え、経済的収縮に遭遇し業務量が減少したときは、全員一丸となって難局を乗り切らなければならないと判断した。このような考え方に基づき、会社が最後に下した決断は従業員全体の食事手当を閉鎖予定の工場に勤める従業員の賃金に充てたのである。このように従業員が団結し、利益も困難も共有している企業から、中国企業が学ぶところは無いだろうか?

 ただ従業員の生活を思う一心で経営を行っていると、従業員も又企業の期待に背くことなく、「品質は100かゼロか」各従業員の心中にはこのようなものさしが刻まれていく。「品質管理は人の管理」であり、商品生産過程においては品質のみならず、従業員の抱くプライド、責任感、職業道徳にも神経を配り、消費者へ「満足」という答えを出させているのである。

 我々中国企業には「稼ぎの多い者が英雄である」という短絡的思考が横行している。多くの企業が従業員へ給料を払いすぎていると叫んでいるが、意外なことに、実は材料の搬入から商品の出荷までの、一連の浪費という形で、往々にして従業員へ大きな報酬を支払っているのである。高度な職業道徳を備えた従業員を使用すれば、「良馬は鞭の影を見ただけで走る」と言うように、自然と社長に替わってコストを節約し、素晴らしい商品を生産してくれるのである!

 日系企業管理者の観念は、人情的な管理を通じ、企業の成長を持続させるというものである。規則制度は管理者の選択肢の一つに過ぎない。彼らは部下に積極的に業務をさせるべきだと考えており、強迫的な行動を取らずにそれを成し遂げる。ただ部下に優しく接し、心地よく仕事をさせるだけで、彼らは積極性と創造性を発揮し、ただ商品品質の保証のために全ての力を費やすのである。