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【判例】病気休暇の長期化によって勤続満10年に達した場合・・・・(2014年4月25日)

【判例】病気休暇の長期化によって勤続満10年に達した場合・・・・(2014年4月25日)

案例:

    解雇制限期間中に勤続年数が十年を超えた場合、使用者側に期間の定めのない労働契約を締結する義務が発生するか

 張某は上海の投資有限会社の社員として、2001年2月1日に入社した。2008年の「労働契約法」施行後、会社側と張某は3年間の労働契約を締結した。労働契約の期限は2008年1月1日より2010年12月31日までだった。

 2010年10月、張某は突然重病にかかり、家族に病気休暇手続を頼んだ。張某は勤続年数が長く、上海病気休暇賃金基準に照らすと「連続した勤続年数が満8年及びそれ以上のときは、労働者本人賃金の100%を支払う」とあった。すなわち会社側は病気休暇中も本来と変わらない賃金を支払わなければならなくなったのである。

 2010年12月28日、会社側は張某に対し、2010年12月31日をもって労働契約を満了し、病気の治癒を待って労働契約を打ち切る旨を郵便にて通知した。

 2011年3月、張某は退院後会社に対し期間の定めの無い労働契約を締結するよう求めたが、会社側はこれに同意せず、法に規定する経済補償金を支払い張某を解雇した。

 張某は会社側の決定を不服として、労働争議仲裁委員会に仲裁を申し立て、労働者たる地位の確認と期間の定めの無い労働契約締結を求めた。

争点:

 本案件の争点は「病気休暇の長期化によって勤続満10年に達した場合、期間の定めの無い労働契約を締結しなければならないか、という点である。

 張某側は、「労働契約法」規定によれば労働者が使用者の下で連続10年間勤続し、労働契約の継続を求めた場合は、労働者側が有期契約を求めない限り期間の定めの無い労働契約を締結しなければならない、とある。2001年2月1日に入社し、2011年3月に勤続年数が10年に達しているから、会社側は労働契約を終了させることができず、また期間の定めの無い労働契約を締結しなければならない、と主張した。

 一方会社側は、張某と2008年1月1日に締結した労働契約は、2010年12月31日をもって終了している。しかし張某が病気による休暇を取っていたため、労働契約の終了が順延したものである。2011年3月張某は治癒したが、それは病気休暇が満了しただけであるから、会社側は労働契約を終了させることができる、と主張している。

判决:

 仲裁委は、会社側が労働契約満了前に労働契約を再締結しない意思を示していたので、労働契約の満了をもって契約は自然に終了する、と判断した。ゆえに、法定事由による労働契約順延の場合は、解雇禁止に当たらないとし、会社側の労働契約終了行為は合法であるとして、張某の主張する労働者の地位確認と期間の定めの無い労働契約締結請求を却下した。

分析:

 「労働契約法」第四十二条には、「下記の状況にある労働者において、使用者は第四十条、第四十一条により労働契約を解除することができない。    

 (一)職業病の発生する危険性がある業務に従事する労働者で、離職前職業健康診断を受けていない者、もしくは職業病の疑いまたは医学的観察期間にある者。

 (二)職業病または負傷により、本事業単位での労働能力を全部または一部喪失したと認められる者。    

 (三)疾患もしくは就業によらない負傷による医療期間内である者。

 (四)出産育児期間にある女性労働者。    

 (五)本事業単位で満15年間連続して就業した労働者で、法定退職年齢まで5年に満たない者。

 (六)その他法律、行政法規に定める状況にある者」    

 本案件のカギは、法的事由により労働者の勤続年数が10年を越えた場合、それが期間の定めの無い労働契約締結の根拠となり得るか否かという点である。これについては、「労働契約法」第四十五条に明確な規定がある。「労働契約の終了について、本法第四十二条に定める事項に該当するときは、当該事項に該当しなくなったとき、労働契約は消失もしくは終了するものとする」。また、上海市高級人民法院「労働契約法適用に関する若干問題及び意見」第四条第三項にその解釈が明確に記載されている。也就是说,張某の契約期間延長は特殊な状況にある労働者を保護するために為されたもので、労働契約期間満了を延長せねばならず終了させることが出来ないものであった。法律上労働契約を終了できない特殊な状況下にあって、法に反し労働契約の終了に関する規定を拡大解釈することはできず、期間の定めの無い労働契約締結要件についても同じことが言える。ゆえに、張某が医療期間を終えたとき、解雇制限期間の終了と共に労働契約も終了するのである。張某の勤続満十年を根拠として期間の定めの無い労働契約締結を求めることには、法的根拠が無いということになる。

 労働契約満了前に病気休暇や産休が存在するときは、使用者側が予め規範的処置を取り、労働契約を延長するか否かを書面により明示しておけば、後に不必要な争いを起こされずに済むということを指摘しておかなければならないだろう。    


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部