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【寄稿】日系企業によく見られる人的資源管理における問題点(2014年05月25日)

【寄稿】日系企業によく見られる人的資源管理における問題点(2014年05月25日)

 ここのところ、筆者が顧客との面談を行っていくうち、日系企業にはいくつかの普遍的な問題があることに気づいた。これらの問題は日系企業が現地化しきれていない事実をある程度において体現しており、中国現地で求められている事との相違が存在することは、日系企業の中国における成長及び人材の確保にとって一定の障害となる。本編では、この問題について文章という形で読者の皆さまに建議してみたい。

1.人事コストの硬直的増加を如何にして克服するか?

 急速なコスト上昇を避けるためには、硬直的な人事コストの増加を和らげる必要がある。

 多くの日系企業はその賃金体系において、固定賃金の占める割合が高い。毎年10%前後のベースアップは、企業に言わせると大きな負担なのである。

 例えば、ある企業の従業員の基本賃金が月5000元であったとして、これが10%の速度で増加した場合、翌年には月5500元となり、少なくとも500元のコスト増となるのである。もしこの従業員の賃金構造を変化させれば、5000元の賃金を基本給と能力給に分け、例えば基本給3000元、能力給2000元とし、基本給のみベースアップさせ能力給をその人事評価により増額すれば、従業員の能力も伸び、また賃金調整も容易になる。この例では、人事コストが急速に上昇している現状にあっても、最小で300元の賃金コスト増で済むのである。

 当然、一部企業からはこういう疑問の声が沸くだろう。「従業員がどうして、基本給の分割に応じるのか?」と。この点に関して、筆者は問題の解決における一つの考え方を提示するに止めようと思う。「管理とは手腕であり、現用のやり方を堅持するだけでは問題を解決できない」。

 この他、多くの企業が賃金の補助的な意味合いで、食事手当を支給している。食事手当は物価水準やCPIとリンクさせるべきであり、もしCPIが3%以下ならば、物価に大幅な変化が見られないということであるから、食事手当を上げる必要は無いのである。

 次に変動報酬、一般的に言うところのいわゆるボーナスについてだが、ボーナスの支払いは従業員の業務貢献度とリンクしていなければならない。もしボーナスと従業員の創造した価値との間に乖離があれば、それは従業員が企業へ何ら価値をもたらしていない状況にあっても同じように奨励を受けていることとなり、企業へ更なる人事コストの負担をもたらす結果となる

 なので、変動報酬支払いは科学的かつ合理的根拠に基づいて設定しなければならないのである。如何に正確に従業員の貢献度を測るか、如何に公平性と客観性を獲得するか?この点は多くの在中日系企業が困惑している問題である。この点について、企業は従業員の主となる業務内容に対して評価を行い、異なる職位、従業員に同じものさしを使って評価を行わないことを提起したい。

 そうでなければ、従業員の貢献度を正確に測ることは出来ないであろう。一部日系企業は全従業員に対し同じものさしによる評価を行っているが、これは誤りである。従業員評価の要点は従業員の為した仕事の良し悪しであり、彼らの業務内容を評価すべきなのである。ゆえに、従業員それぞれの評価内容は区別されるべきである。この評価結果こそが、従業員の賃金、ボーナス、昇進を決めるのだから。

2.新旧従業員間の賃金逆転現象

 一部日系企業においては、招聘した新たな従業員の賃金が、同社で働く従業員よりも高くなることがままある。企業がもし新たな従業員を雇おうとすれば、それは従来の賃金システムを打破されることとなり、他の従業員の不満を招く。もし従業員を雇わなければ、これは企業にとって人材的損失となる。これもまた、在中日系企業を大いに悩ませる問題である。

 この問題を解決するに当たって、重要なのは何故このような現象が発生するかを分析することである。

 一部日系企業では、外部市場のデータに注意を払っていない。筆者は、日系企業とコミュニケーションを取るうちに、大企業ほど外部データを収集、分析する習慣があり、中小企業ほど外部データへの感度が低いことに気づいた。これは一部在中日系企業が外部市場の状況に疎く、人事コストの現状をそれほど深く把握していないことを示している。賃金調整において、その調整幅が他企業より低ければ、賃金水準が市場の水準からどんどん離れて行き、企業内の賃金水準が市場から乖離したものとなるであろう。このため、人材招聘時に新しい従業員の賃金水準が高くなるという現象がもたらされるのである。

 ゆえに、定期的に市場データに着目しておくことが企業にとって必要かつ重要なことなのである。外部市場のデータを参照する上で最も重要なプロセスはサンプルデータを抽出する事である。何故なら、其々の企業によって状況が変わってくるため、サンプル抽出もそれに合わせたものを選択しなければならないからである。具体的な方法については、下図を参照されたい。

サンプルデータ抽出の方式
サンプルデータ抽出の方式

 本編ではまず、在中日系企業の関心を集める二つの問題について触れた。次号では、更にその他の問題点についても指摘してみたい。

 
        寄稿 --- 弊社専属中国人アナリスト 陳潔イ