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【寄稿】アウトソーシングサービス---人的資源サービス業成長の新天地(2014年7月23日)

【寄稿】アウトソーシングサービス---人的資源サービス業成長の新天地(2014年7月23日)

 「労務派遣暫定規定」の施行に伴い、多くの企業や人材会社で「労務派遣」から「人的資源アウトソーシング」へのシフトが考慮され始めています。実は、人的資源企業は「人的資源アウトソーシングサービス」のパイを大きくするだけでなく、他業務の「アウトソーシングサービス」へ直接参入することができます。人的資源企業はこのメリットを生かし、新天地を切り開こうとしています。

一、我が国のアウトソーシングサービスの発展概況

 「中国アウトソーシングサービス発展報告」では、2012年、世界経済や政治情勢の多様化と中国経済成長の鈍化という背景下、中国アウトソーシングサービス業は依然高い成長を続けています。一年間の契約額は612.8億ドルに上り、前年比37%増となっています。

 対外アウトソーシング業が安定した成長を続けていると同時に、対外アウトソーシングサービス市場も急速な成長を見せており、2012年対外アウトソーシングサービス取引額は129.3億ドルで、前年比で51.1%も伸びています。中国の経済シフトが加速するに伴い、国内市場にも巨大な需給が生まれており、対外アウトソーシング業務を目的としていること、言語や文化的差異が無いこと、為替リスクが無いことから、多くの企業が包括的人的資源サービス企業へ参入しています。現在、国内で最も開放されているのは金融及び電信市場ですが、未来エネルギー産業、鋼鉄などの製造業、航空等旅客業、大企業や政府機関、公共サービス等へもアウトソーシング業が開放され、在岸アウトソーシングはより発展を続けています。

二、我が国のアウトソーシングサービス分類と発展状況

 「中国アウトソーシングサービス発展報告」では、現在我が国のアウトソーシングサービスを、コンピュータ技術アウトソーシングサービス(IPO)、業務過程アウトソーシング(BPO)、智力アウトソーシングサービス(KPO)の三種類に分類しています。

(一)コンピュータ技術アウトソーシングサービス(IPO)

 IPOとは我が国アウトソーシングサービス業の主要な領域であり、安定した成長を続けている、中国本土の注目を集めている、産業のシフトが進んでいる、企業規模が拡大している、という4つの特徴があります。現在IPOが急速に成長している背景には「クラウドアウトソーシングサービス」と「電子商務アウトソーシングサービス」があります

1.クラウドアウトソーシングサービス

 クラウドとはインターネットを利用して使用する、サーバーにあるソフトウェアやデータのことを比喩した表現です。ユーザーはパソコン、モバイルPC、携帯電話などからデータセンターへアクセスし、自身の求める演算を行います。これは使用量に基づいて使用費を計算するビジネスモデルとなっているのですが、クラウドでは必要なときにウェブ上のデータベースにアクセスし、ネットワーク、ツール、保存データ、アプリケーション、サービス等の必要な資料やサービスを得られます。クラウドは超巨大な規模、ヴァーチャル化、高い信頼性、利便性、高い発展性、適時性、廉価性などの特徴を持つと同時に、巨大な投資対象となっています。

 「クラウド」プラットフォームとクラウドモデルのアウトソーシングサービスはもはやアウトソーシング業成長の主流となっており、「クラウドアウトソーシング」は産業全体の発展期間を短縮化し、共生関係を促し、効率を高めます。「クラウドアウトソーシング」はまた「クラウドクリエーション」をもたらし、「ソーシャル」という概念において新たな商業サービスを創造できます。「クラウドアウトソーシング」は更に製造業の領域にまでそのサービス領域を広げており、将来的には製造業への包括サービスモデルが伝統的な製造と商業の分割モデルに取って代わることでしょう。

2.電子商務アウトソーシングサービス

 我が国の電子商務アウトソーシング産業は急速な発展を遂げており、今まさに巨大な成長機会に面しています。伝統的企業は電子商務アウトソーシングが作り出した巨大な市場ニーズによって次々とオンライン進出を果たし、投資機関は電子商務アウトソーシングによって資産運用を果たしています。また国家や地方、各級政府の高度な政策重視により、良好な成長環境が整っています。

 電子商務の絶え間ない成長とアウトソーシング需給の拡大に伴い、同サービスはコンサルティング、方針策定、商品の陳列編集、管理、運営、物流、支払い、プラットフォームの設定及び維持管理まで多岐に及んでいます。

 電子商務アウトソーシングには産業の範囲及びサービス開拓の深化と産業チェーンの整合と改善という2つのメリットを持ち、ホームページの作成及び運営、商品編集、宣伝公告、営業計画、アフターサービスなどを包括してアウトソーシングサービスし、全体的なソリューションを提案しています。

(二)業務過程アウトソーシング(BPO)

 2012年、BPO業務は前年比50%前後の高い成長を持続しています。我が国のBPO業務は主に金融、コールセンター、人的資源、物流及びサプライチェーン管理アウトソーシング等に集中しています。このほか、医療アウトソーシングサービスも近年新たな業務形態として出現しており、大きな成長の余地を有しています。

1.金融アウトソーシングサービス

 我が国の金融アウトソーシングサービスはまだ黎明期ですが、世界中の銀行機構や保険、証券などの金融業界や理財、金融派生商品、資産管理などの方面で我が国のアウトソーシングサービスが大きく成長する余地があります。

 金融アウトソーシングサービス業務は幅広く、法務や会計、人事だけでなく、クレジットカード管理や現金輸送、貨幣整理、ATM管理、保安、抵当からインターネットバンキングまでに及びます。

 現在、我が国金融アウトソーシングサービスは未だ初期段階であると言えますが、BPO アウトソーシング商のノウハウが蓄積されるに伴い、より多くの非核心業務をアウトソーシングがカバーすることになるでしょう。

2.コールセンター

 コールセンター産業は近年大きく成長した産業であり、アウトソーシングサービスが最も成熟した業種であると言えます。同サービスは伝統的な電信、銀行、保険などの領域からインターネットショッピング、旅行、モバイルネットなどにまで業務範囲を拡大しています。クラウド計算コールセンターの急速な発展、3G技術、ユキビダス技術、モバイルネットの運用により、かつての単一的言語、文字から音楽、文章、絵、動画など多くのアクセス方法に変化しています。また、クラウドコールセンターは地理的条件にも恵まれており、人的資源コストなどの難題をものともしないだけでなく、SIP技術の発展により、一部コールセンターでは二、三級都市での業務や在宅業務などで成長しています。

 また電子商務等新興産業の発展に伴い、コールセンターにも大きな成長機会が訪れています。セールスやアフターケアはもちろん、営業や広告まで、コールセンターは電子商務に不可欠なものとなっています。

3.物流及びサプライチェーン管理アウトソーシングサービス

 物流企業の運営においては人的資源管理、財務、法律、顧客サービス、業務プロセスの設計及び改善、データ処理などの業務プロセスにおいて大量のアウトソーシング可能な領域があり、また物流産業チェーンの各段階及び物流企業の各セクションにおいてにおいて大量のアウトソーシングサービス需要があります。現在、我が国のサプライチェーンを管理する人材は慢性的に不足しており、人材の欠乏がサプライチェーン管理アウトソーシング業務成長のボトルネックとなっています。

(三)智力アウトソーシング(KPO)

 KPO業務はアウトソーシングサービス業務中でもハイエンドな業務です。アウトソーシングサービス業の基本的ノウハウの蓄積により、2012年我が国KPOサービスは広範囲に広がり、前年比50%以上の急速な成長を見せています。

1.工業設計アウトソーシング

 伝統産業のモデルチェンジや検品検査のアウトソーシング等は、我が国のKPOに大きな成長の契機を与えています。

 伝統的工業製造型企業はサービス型企業、ソリューション提供型企業へと、商品製造輸出からサービスとノウハウ提案型企業へとモデルチェンジしています。例えば、ハルピン電気グループはアウトソーシングサービス業務の強化によって、その核心業務を電気機器の供給から電機工程全体のソリューション提案サービスへと変え、「哈電モデル」として伝統的製造業からサービス業への転換を実現させました。

2.アニメ、ネットゲーム研究開発アウトソーシング

 我が国のアニメ、ネットゲームのアウトソーシングは急速な発展を遂げており、2012年杭州アニメ祭りの契約金は146億元に上りました。

 アニメ、ネットゲームアウトソーシング企業はクリエーションの段階へと成長を続けています。クリエーション(産業の核心的価値)→制作(アニメ制作アウトソーシング、ネットゲーム開発アウトソーシング)→運用→販売(本、映像、音楽製品、ゲーム、ゲーム運営、版権、電信運営)→派生商品(プラモデル、おもちゃ、小説、被服、食品、文具、テーマパーク、展覧会、飲食店、旅行等)と、整った産業チェーンが形成されています。

3.医薬品研究開発アウトソーシング

 コストと人材という観点から、我が国は医薬品研究開発の重要な移転先となっています。多くの著名なグローバル医薬品企業が我が国への移転を進めており、我が国には医薬品研究開発を担う新たなグローバルアウトソーシング企業が多く出現しています。2012年初、我が国の医薬品研究開発アウトソーシング企業は全世界の5%を占めるまでになりました。医薬品研究開発アウトソーシング業の成長は投資ブームを生み出しており、多くの国際的製薬企業が中国の巨大な医薬品市場や、良好な資源と競争力のある研究開発コストを理由として、中国での医薬品研究開発への投資や医薬品研究開発アウトソーシング会社の買収に乗り出しています。

4.検品検査のアウトソーシング

 第三者による検品検査及び独立した研究機構に代表される検品検査アウトソーシングサービス市場は、急激な成長を遂げるだけの巨大な潜在能力を有しています。検品検査という業務の特性上、その業務は業界全体をカバーしており、世界の工場である中国では巨大な需要が見込めます。国際的に著名な検査会社の巨頭SGSグループは中国に50以上の使者と数十箇所の研究機構、10000人以上の従業員を持ち、農作物や鉱物、石油加工品、消耗品、工業用品、生命科学、自動車などを取り扱っています。2012年には全体で3.8億元を売上げ、年成長率は20%に達しています。

 科技部の公布した「現代サービス業発展『十二五』専門項目規則」と国務院の発布した「衛生事業発展十二五規則」では「委託研究開発、検品検査、技術訓練」及び「研究機構の検査能力」が強要されています。我が国の独立した研究機構は猛烈な勢いで成長しており、国内での検品検査は市場の1%にも満たないですが、国外では30%-40%のシェアを占めており、我が国の検品検査アウトソーシングサービスはまさにこの世の春を迎えようとしています。

(四)人的資源アウトソーシング(HRO)

 長きに渡り、人々は人的資源アウトソーシングを業務プロセスアウトソーシングの裏側に位置するものとしてきましたが、業界ではこの意見に反対の見方を示していました。その後長期的な討論、検討を経て、人的資源アウトソーシングサービス(HRO)は産業界から一つの独立した業務として認められたのです。HROはIPO、BPO、KPOと並び現代アウトソーシングサービスの四大モデルの一つです。労務派遣の規範化が進んだ今日、我々はHROにより注目すべきです。

 人的資源アウトソーシングサービス(HRO)とは事業単位の成長重要に応じて、一部または全部の人的資源管理業務機能及び非核心的業務の人的資源配置を他企業及び組織へアウトソーシングすることで、コストの低下と資源の業務への集約をもって効率を最大化させるものです。

 人的資源アウトソーシングサービスはここ数年上海で急速に発展しています。上海人材サービス業協会の統計では、2003年には40億産業であったのが2012年には営業利益1258億元を稼ぎ出すほどになりました。これは毎年30%のスピードで成長したことを意味しており、主要産業へ一歩全身したことを意味します。筆者が良く知るところのランドスタッド人的資源公司は、オランダに本部を持つ世界500強のグローバル企業ですが、年営業收入は1800億元で、総生産量はオランダ国内ではフィリップスに続く第二位となっています。人的資源アウトソーシングサービス(HRO)は業務範囲が広いだけでなく、そのサービスも成熟、規範化しています。以下にサービスの一例を挙げます。

 1.ヘッドハンティング

 2.管理コンサルティング

 内容:(1).人的資源戦略 (2)組織設計(3)業務/職位分析(4)業績考課管理(5)報酬管理(6)企業の能力、素質モデル(7)奨励体系(8)福利年金(9)業務プロセス及び制度(10)キャリアライフプラン/リーダー引継計画(11)人的資本審査(12)従業員の慰留

 3.招聘サービス

 内容:(1)インターネット招聘(2)委托招聘(3)携帯・スマホ招聘(4)高級人材招聘(5)招聘プロセスのアウトソーシング

 4.人材紹介

 5.人材レンタル

 6.人材訓練

 内容:(1)語学訓練(2)技能訓練(3)管理訓練(4)認証訓練(5)企業内訓練 (6)職業指導

 7.人材評価

 人材評価には高い技術を要しますが、現在主に行われているのは以下の4項目です。
(1)正確測定 (2)職業傾向測定 (3)専門技能測定 (4)信任力測定

 8.管理サービス

 管理サービスとは一般的に単一項目サービスを指します。
内容:(1)報酬管理(2)成績管理(3)福利管理(4)HRソフトのレンタル(5)健康診断(6)年金管理(7)出張及び販売管理

 9.人事代理

 内容:(1)ソリューション管理 (2)登録手続代理 (3)報酬代理(報酬方針調査、報酬設計、報酬モデル構築、報酬計算システム及びプロセスの開発、業績及び報酬データの収集と審査、報酬計算、報酬支払い) (4)福利代理 (5)社保代納 (6)異動代理 (7)リストラ代理

 10.情報調査サービス

 上海自由貿易区で新たに認められた人的資源サービスで、以下の4項目があります。
(1).従業員の背景調査 (2)報酬調査 (3)福利調査 (4).従業員の在留意思調査

 11.労働紛争処理サービス

 これは産業チェーンの末端に当たりますが、大量の人力、物力、財力を要するので、多くの企業がアウトソーシングしています。内容:(1)和解 (2)仲裁 (3)裁判

 三、アウトソーシングサービスは人的資源サービス業に活躍の場をもたらす

 アウトソーシングサービスの勃興発展は、関連産業へ成長の契機を与えるだけでなく、人的資源サービスにも活躍の場をもたらします。人的資源サービス企業は自身が大きく成長している人的資源アウトソーシング(HRO)であると同時に、大胆にIPO、BPO、KPO領域に参入することもできます。厚い人材層を持つ長所をもって、新たな領域を直接開拓していくのです。その成功例を、我々は知っています。

 BridgeHR人的資源公司は典型的な人的資源公司であり、その業務も伝統的な招聘、訓練、コンサルティング、人材派遣等でした。五年前、大胆にも業務過程アウトソーシング(BPO)業に参入し、宝鋼グループの常温圧延及び流水ラインと物流業務を引き受けました。常温圧延は高い技術を要し、特に宝鋼という国際的にも一流の製鉄工場では、より高い技術を求められます。BridgeHR公司は自身の人的資源をもって、これに挑戦しました。宝鋼の常温圧延ラインには1300人以上の従業員がおり、数十の職種があります。また物流公司にも800人以上の従業員がおり、十数個の職種があります。これらが密接して協力関係を結び、五年以上整然と業務を行い、品質管理を徹底した結果、企業の成長とコスト削減の二つの目標を達成し、目標年には3億元強の営業収入を安定して得ることができました。

 金国コンサルティングは金融に特化した人材招聘、訓練、コンサルティング、貴金属販売、外国為替の監査を行う会社でした。最近同社はシンガポールと協力し、大胆にも金融業務プロセスのアウトソーシング(BPO)を行い、大きな成果を上げました。シンガポールの六達社は外国為替公益を行う会社ですが、機制を制すため、上海に外国為替業務を行うためのプラットフォームを作り、中国で全国展開を始めようとしていました。しかし中国では現在、このような業務は認められていません。そこで彼らの合弁会社は、シンガポールの六達社の外国為替交易業務をアウトソーシングしたのです。交易地点を上海に設定し、交易者は上海で採用、インターネット上でシンガポール本社名義で国際為替交易に参加したのです。上海の監査部もこれを受け入れました。インターネットを通じ、外国籍会社名義で業務を行うため、自国の為替市場に干渉することが無いからです。また資金の流出が無く、むしろこの業務によって国際為替交易のノウハウを身につけた人材を得られるのです。これは、中国の外国為替交易開放を早める効果があり(金融改革の深化に伴い、これが開放される日は近いと思われます)、上海市はその機制を制した形となることを意味するものです。人的資源サービス企業として、伝統的業務範囲から新天地を開拓し、企業の成長を創造したのです。

 上海では更に多くの人的資源会社、例えば上海外服、Normstar、万宝盛華等全てが伝統的業務からアウトソーシングサービスの領域へ進出しています。複合型企業を打ち立て、不敗の地に立つべく努力を続けているのです。

 アウトソーシングサービスの発展は、我が国の経済発展に欠かせないものとなっています。人的資源サービス企業はこの機会をもって、新たな分野へ大胆に進出し、企業の成長のために新天地を創造しているのです。


        寄稿 --- 範本鶴