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【判例】禁煙場所での喫煙による解雇は有効か?(2014年10月10日)」

【判例】禁煙場所での喫煙による解雇は有効か?(2014年10月10日)

案情:

 上海の男性である衛さんは、1984年から上海にあるタイヤ会社のゴム工場に入社していた。2001年4月、ゴム工場が某外資系タイヤ会社に買収され、そこで衛さんは糊付けを担当していた。2007年12月1日、衛さんはタイヤ会社と期間の定めの無い労働契約を締結した。

 翌年6月14日、衛さんは就業時間中に禁煙区域で煙草を吸っているところを目撃された。6月17日、タイヤ会社は衛さんに解雇通知を手渡した。そこには「衛さんが禁煙区域で煙草を吸った行為に関し、就業規則及び中華人民共和国労働契約法実施条例に基づき、同氏の解雇を決定した」旨の記載があった。

 衛さんはこれを不服として、7月4日に仲裁を申し立てたが却下された。衛さんは更に法院へ提訴し、タイヤ会社へ解雇の撤回と労働者たる地位の確認を求めた。

供述:

 衛さんは依然としてこれを冤罪とし、自身の弁明を繰り返した。彼は、硫化糊付作業部屋には飲料机や事務机があり、休憩室と言ってもよいものであり、当日煙草を吸った行為は厳重な規律違反に当たらないと主張した。タイヤ会社の対応は徹底しており、硫化糊付作業部屋には休憩室を設置せず、また粉塵被害を抑える為として、わざわざ作業部屋内を小部屋で隔てていた。部屋の門はガラスで出来ているため、仕事の状況がわかるようになっていた。

 衛さんは更に、作業部屋内にはエチレングリコール、フレンチチョーク、液体洗剤、黒炭などが置いてあったものの、禁煙表示は無かった。会社側は作業部屋の外に東屋を設置し、そこを喫煙場所としていたが、当日は雨が降っていたため、室外喫煙所で喫煙できなかった、とした。しかしこれについてタイヤ会社側は、衛さんの職場は黒炭など可燃物の多い作業部屋であり、これらの物品には本来禁煙標識を付けるべきであるが、衛さん自身はベテラン従業員なので、この辺りのことは明確に理解していると主張した。

 タイヤ会社側は、室外喫煙所が社内で唯一喫煙の許された場所であり、このことは全ての従業員に通知してある。衛さんが作業部屋内で喫煙したことは、重大な規律違反に当たる、と主張した。会社側は法廷に「屋内喫煙室閉鎖通知」などの証拠品を提出し、室外喫煙所が唯一の喫煙場所であると通知したにも関わらず、それ以外の場所で喫煙したために「就業規則」に基づき処分した、と述べた。

 別の審査で、就業規則には「従業員が喫煙禁止地区で煙草を吸い、または可燃物を会社内に持ち込み、または会社及び工場内のいかなる場所においても燃焼物を捨てた場合、重大な規律違反として解雇する」、と記してあった。この就業規則には、衛さんもサインしていた。

判決:

 

 衛さんの解雇無効の訴えは、却下された。

分析:

 規定によると、労働争議案件中、使用者の責による労働契約の解除や契約の取り消し、会社からの除名や、賃金カット、勤続年数の計算などにより労働争議が発生したときは、使用者側に証明責任がある。本案件では、タイヤ会社が2011年6月14日に硫化糊付作業部屋で喫煙していたことを理由として、衛さんを解雇している。衛さんが室内喫煙室閉鎖通知を見ていようとなかろうと、当日雨が降っていたため喫煙所へ行けなかったと陳述している所から見て、彼はこの通知を知っていたのである。室外喫煙所は会社内唯一の喫煙場所である。衛さんは作業部屋が喫煙場所でなく、室内にある物質が可燃物で、喫煙が安全を脅かす危険性を持つことを知っている。また彼は、禁煙地区での喫煙がどれほど重大な結果を招きかねないかを熟知していたはずである。

 また、会社側の就業規則は民主的手段を踏んでその手続と公示を行っており、衛さんもこれに同意している。就業規則には「従業員が喫煙禁止地区で煙草を吸い、または可燃物を会社内に持ち込み、または会社及び工場内のいかなる場所においても燃焼物を捨てた場合、重大な規律違反として解雇する」とあり、会社側がこれに基づいて衛さんを解雇することは妥当である。総じて、タイヤ会社が衛さんとの労働関係を解除したことには、合理的な根拠があるものであると言える。


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部