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【寄稿】国有企業における中長期的インセンティブ制度展開への検討(2014年12月05日)

【寄稿】国有企業改革元年講話----
国有企業における中長期的インセンティブ制度展開への検討(2014年12月05日)

 第十八回三中にて提出された国有企業改革の深化は現在山場を迎えており、いかに改革を深化させるか、何を、どのように変えるかが成功の鍵を握っている。上海、広東、四川、天津、深圳などでは国有企業改革深化に関する指導意見の施行と実施が次々と為されている。この中で、分類管理、混合所有制、中長期インセンティブ制度等が国有企業の收入分配改革において大いに議論されているが、ここでは国有企業の中長期インセンティブにおけるいくつかのポイントを検討しようと思う。

一、 分類管理は中長期的インセンティブ制度発展の基礎である。

 かつての国有企業改革は「統一的な」市場化に終始し、差異化管理の意識に欠けていたが、三中全会の「各国有企業の機能の明確化」要求により、国資委は更に国有企業の分類化を進めることとなった。各国有企業の位置づけ、市場属性、財産権管理等の要素を鑑み、国有企業の区分けと差異化管理を実施しなければならない。現在では中央企業及び地方国資委企業の特徴を分析し、その機能と競争性の二つをもって区分していることが多いようである。

 各国有企業は、リーダーの配置や報酬管理、業績考課、目標設定、監査の要点などについて、其々の基準、方法、目標を設定し監査を実施すべきである。同様に、企業の分類に応じて国有企業の中長期的インセンティブ策やその展開を個別に設定すべきである。また中長期的インセンティブ策定においても、持株型や現金型などの複数のやり方から最適なものを選択し、ボーナスや持株の上限を設定するなどその加減を調整しなければならない。業績目標の設定や権利行使の条件なども各国有企業に応じて差異化すべきである。

二、 特に競争性のある国有企業へは、株主権をもって改革の主流とする

 国有企業改革は現在本格的な段階を迎えており、大きな困難を抱えているが、国有企業改革の深化においては財政状況の整理、法人統治の徹底、市場化の導入の三方向から着手し、体制、規制を改正し上から下へ主導的に国有企業改革を深化させなければならない。

 (官民の)混合所有制も改革の方向性の一つを示しているが、混合の目的は何か?どのように、どの程度混合させるかが鍵となる。国有企業の分類と性質から、競争性のある国有企業は優先的に中長期的インセンティブ制度を展開すべきであり、また混合所有制の実施においても競争性のある国有企業において真っ先に展開し、発展の基礎を打ち立てるべきである。競争性のある国有企業は制度改革や、持株制度や限定株式の発行、擬似株主権の付与など株主権を中心としたインセンティブ方式を打ち立て、国家以外の持株比率を増大させることにより、資本の力を真に発揮させ、従業員の積極性、生産性を開放させることが出来る。但し機能性、公共性の高い国有企業においては、その業務内容や社会的公平性に応じて差異化し、まず中長期的インセンティブ制度の必要性を分析した上で、重要なプロジェクトの完成や専門的業務について現金によるインセンティブを与えるべきである。国有企業だからと言って、一律に取り扱ってはならないのである。

三、 コンセプトの先行――均衡の打破、インセンティブとイノベーション

 現在国有企業の混合所有制や株主権改革が大きな議論を呼んでいるが、これにブレが生じて改革の動力やイノベーションへの決断力を欠き、そのコンセプトについて行けなくなれば、中長期的インセンティブ制度と制度改革の展開に悪影響を与え、試行及びレアケースを生み出しただけの結果となりかねない。

 先進市場上場企業の90%が持株制度を導入しているが、中国市場でこれを導入している企業は20%にも満たず、国有企業に至っては上場企業の10%未満という数字が出ている。地方国有資本改革の先端を行く上海を例に取れば、現在60数社の国有企業が上場しているにも関わらず持株制度を有する企業は10%にも達しておらず、改革の進行は非常に限定的で、中長期的インセンティブ制度はなお企業成長の有効手段たり得ていないのである。国資委の大きなグループ型国有企業では、一般的に職級別管理方式を採っているが、これらの組織はこの分配方式や元からの短期的インセンティブにより内部での均衡を保っている。しかし、もし下部に属する競争性のある国有企業や科学技術型国有企業が株主権改革や中長期インセンティブ制度の導入などにより収入分配の均衡を破れば、政策に大きな進展を見る可能性がある。また制度改革や中長期インセンティブは従業員の奨励や収入増加といった狭い意義を持つだけのものではなく、企業財産権の調整、組織機構の整理、合理的管理のための重要な手段であり、制度刷新に属するものである。ゆえに、全体の指導原則を把握した上で、その支持を得て大胆な施策を試すことが望まれる。

四、 秩序立った体制改善を

 国有企業改革の歴史を顧みると、国有企業制度改革、従業員持株制度、管理层MBO、上場企業への株式インセンティブ等の概念及びその運用は決して未知のものではなく、経験や教訓を有しているものである。また、現行の国有企業改革、持株制度などの主要な法令は国資委成立以降に制定されたものである。この新たな趨勢において、国有企業はそれぞれの位置づけ、分類、成長への要件、制度改革の限度、資産価値などを鑑みつつ、国資委、財政部等関連部門のトップダウンによる適時的な制度設計に基づいて、国有企業の順序立った成長を導かなければならない。

 改革元年において、方向性は既に明確になっている。これを誠実に実行できるかが、制度改革のカギとなるだろう。


    撰稿: --- 中智人力資源管理諮詢有限公司  
        人力資源コンサルティングセンター  執行総経理  佟 虎