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【判例】破産管財人は従業員との労働関係を構成する主体となり得るか?(2015年1月14日)

【判例】破産管財人は従業員との労働関係を構成する主体となり得るか?(2015年1月14日)

案例:

 鄭さんは1996年11月より某グループ企業の支社で仕事をしていたが、労働契約を締結していなかった。2007年5月30日、某グループ企業は破産宣告を受けた(注:営業許可を取り消された)が、支社や工場では依然経営を続けていた。

 2008年1月4日、鄭さんは業務中に負傷し、その労災申請において労働関係の存在を巡り争いが発生した。鄭さんは2008年9月7日、支社を相手取り当地の労働争議仲裁委員会へ仲裁を申立て、労働者たる地位の確認を求めた。また、2008年9月16日,鄭さんは更に某グループ企業の破産管財人を相手取り労働者たる地位の確認を求めた。2008年12月8日、労働仲裁委員会は鄭さんの支社での労働者たる地位のみを確認した。鄭さんはこれを不服として人民法院へ提訴し、破産管財人との間に労働者たる地位があることの確認を求めた。

争点:

 破産した企業との労働争議において、破産管財人は訴訟主体となり得るか?営業許可を取り消された支社はどうか?

分析:

 

 労働争議の実践において、破産宣告を受けた企業の労働者が労働者たる地位を確認し経済補償金及び労災認定を請求するケースはままある。破産企業との労働争議において破産管財人を当事者と見做すのか、それとも破産企業を相手取るものなのかについては大きく意見が分かれており、二つの説が唱えられている。

 

 ひとつは「民法通則」第四十五条及び第四十七条を根拠とし、営業許可を取り消された、及び破産宣告を受けた場合法人格が失われるという説である。最高人民法院「『民法通則』執行貫徹に関する若干問題に対する意見(試行)」第六十条には「破産した企業法人に対する債権及び債務に関する民事訴訟について、清算組織は自身の名義において訴訟を起こすことができる」とあるため、破産企業の労働争議案件においては破産管財人が当事者となるべきであり、営業許可を取り消されたまたは破産宣告を受けた企業は訴訟主体としての地位を失うとする立場である。ゆえに、この案件においてグループ企業は破産宣告を受けその法人格を失い、その支社も営業許可を取り消されているために、破産管財人を訴訟主体とすることができ、またこれを労働関係の主体とすることができる、とする。

もうひとつは、営業許可証は企業登記の証明書であり、法で定められた営業許可取得の標記に過ぎないとする説である。営業許可の取り消しは行政による処罰であり、その目的は営業活動の停止であって経営活動を禁止するものではない。その意義からすると、営業資格と法人格は別物であり、営業資格の喪失は法人格の喪失をもたらすのではなく、企業法人の解散と清算の手続きの一つに過ぎないこととなる。従って企業法人は営業許可を取り消された後に清算されるまで、その法人格は存在しており、訴訟においても主体となり得るものであり、企業の法人格は清算の完結と登記の抹消を条件として失われる。ゆえに、本案件においては確かに某支社の営業許可は取り消されたけれども、民事的主体となる資格は依然存在するため、「労働契約法実施条例」第四条規定により、本案件における労働関係の主体は鄭さんと支社または某グループ企業となる。破産管財人は破産手続において人民法院により臨時に指定されるものであり、「破産法」第二十五条の立法主旨に従えば、破産管財人の地位は破産企業の代表者であって、破産企業とは代理関係にある。ゆえに、破産管財人は訴訟主体となり得ない。また破産管財人は「労働契約法」第二条に定める使用者とはならないので、労働関係の一方の主体とはならないのである。

 

 我々は、「破産法」における破産管財人及び破産企業の定義及び「労働契約法」における使用者の定義から、後者の説を採る。この説では、破産管財人が労働関係の主体となるという異常な事態とはなりえないのである。


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部