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企業年金Q&Aコラム(一)(2022年9月5日)

报告文(中文)

会員企業各位

いつも中智日企倶楽部智櫻会HPをご覧いただき、ありがとうございます。HPは、開設以降経営者インタビューや講座情報、政策分析、会員紹介、案例分析など、会員の皆様へ有益な情報を提供しています。

中国の高齢化が進み、企業の福利厚生制度が継続的に充実していく中、福利厚生としての「企業年金制度」の採用を検討する企業が増えており、多くの企業が詳細な政策のポイントと実践的なアドバイスを求めています。企業年金は強制加入となるのか?企業年金制度の設立に適した企業とはどのような企業なのか?拠出金や運用益は誰のものとなるのか?企業年金制度は、従業員の定着率やモチベーションに良い影響を与えるのか?……

今回は会員企業からの質問に答える形で、2回に分けて「企業年金Q&Aコラム」を特集しました。「企業年金Q&A」にお答えするのは、中智経済技術合作股份有限公司人力資源部シニア報酬主管の張威拿氏です。

     

張威拿:中智経済技術合作股份有限公司人力資源部シニア報酬主管。10年近くに渡り人的資源管理に関する業務に携わっており、報酬と業績評価の領域において豊富な理論的知識と実務経験を有する。

Q1:「企業年金」とは何ですか?

企業年金とは、基礎年金保険への加入を前提に、企業やその従業員が法律に基づいて独自に設けた付加的な年金保険制度のことです。

企業年金は、国の基礎年金保険を補完する重要なものであり、中国で整備が進む都市労働者の年金保険制度(基礎年金保険、企業年金、個人貯蓄年金保険からなる)の「第2の柱」です。近代的な社会保険制度を持つ国々では、企業年金は「企業年金制度」または「職業年金制度」とも呼ばれ、企業の補助的な年金制度として一般的なものとなっており、年金保険制度の重要な一部分となっています。

また、従業員にとっても、高齢化社会を迎え、インフレが進む中、企業年金は年金の代替率を高め、基礎年金保険に加え、もう一つの将来への安心を提供する手段でもあるのです。

Q2:各企業とも、強制的に企業年金を設立しなければならないのでしょうか?

いいえ。企業年金の設立は強制ではなく、企業が従業員の老後をより確実にするために任意で設けた付加的な年金保険制度という位置づけとなっています。

Q3:企業年金を受け取る条件について教えてください。

(一)国の定める定年に達したとき。

(二)病気(障害)により労働能力を全面的に喪失し、労働能力評価委員会がこれを認めたとき。

(三)出国(出境)し、出国(出境)先に定住したとき。

(四)従業員または退職者が死亡し、企業年金の個人口座の残高を相続したとき。

Q4:外国企業が企業年金を設立することに意義はあるのでしょうか?また、企業年金は従業員の安定とモチベーションの向上にどのように寄与するのでしょうか?

財務的見地からすると、年金の導入は長期的な「費用」となりますので、企業年金の導入には、将来の収益性、財務的支払能力および事業の健全性を事前に総合的に判断した上で、将来を見越した意思決定を行う必要があります。 企業年金は、従業員が企業へより魅力を感じ、コア人材の定着率を高める効果があるため、人材確保の面から見てもとても有益です。人的資源管理とは、あらゆる要素の組み合わせです。人材の育成や確保は、ある単一の利益だけに依存するのではなく、経営人材や企業文化などあらゆる側面を織り込んで進める必要があります。

Q5:どのような企業が企業年金の設立に適していますか?

企業年金を受け取るためには、従業員が法定定年に達する必要があります。このような企業年金保険の特徴に、従業員の年齢構成や人材構成など様々な要素を組み合わせて考えると、従業員が若く離職率が高い企業では、キャッシュフローを重視する若い人にとって老後は遠い存在であることから、企業年金保険導入のメリットはより限定的なものとなるでしょう。逆に、定年間近で中長期の将来保障を重視する従業員が多い企業にとっては、魅力的な制度であると言えます。

Q6:企業年金以外にも、他の福利厚生に類する商品が存在するのでしょうか?

企業年金のメリットは、退職金と中長期の保障、安定性、安全性です。 従業員のモチベーション向上に柔軟性と即効性を求める場合は、市場に出回っている他の福利厚生に類する商品やインセンティブの導入を検討する方がよいでしょう。

Q7:企業年金はどのように運用されるのでしょうか?

調達された年金資金は、一般的なファンドと同じように運用されます。会社が設置した投資委員会が投資機関を選定し、投資商品を選択し、変動する市場状況に応じて利率を受け取る形です。

Q8:企業年金を設立するための要件を教えてください。

(一)基礎年金保険に加入しており、法律に従って保険料の支払い義務を果たしていること。

(二)企業と工会または従業員の代表が、団体交渉を通じて企業年金の設立を決定していること。

(三)連結決算が黒字で、国有資産の価値が維持・増額されていること。経営上の理由で連結決算が赤字となっており、国有資産の価値が維持・増額されない場合は、企業年金を設立しない方が無難です。

(四)継続的に企業年金を拠出する能力を有しており、年金拠出水準が企業の人件費負担能力に見合ったものであること。人件費負担が業界内でも低水準にある企業は、企業年金の導入を見直した方がよいでしょう。

Q9:企業年金の事業者負担と個人負担の割合はどうなるのでしょうか?

企業年金の保険料は、会社側と従業員の双方が一緒に負担することになります。どちらか一方のみが負担するということはありません。 個人負担率と事業者負担率は、複数の段階に分けて従業員に選択させることも、企業が一律に決めることも可能です。 国有企業の場合は国資委員会の関連規定が適用されますが、それ以外の企業は人力資源社会保障庁の関連規定が適用されます。

Q10:企業年金の納付基数はどのように決められるのでしょうか?

具体的な納付基準は、前年度の平均給与、従業員の基本給、各職種の平均給与などをもとに、各企業が自身で定めることができます。 多くの企業が前年度の平均給与を基準としていますが、前年度の平均給与ベースの場合、社会保険と異なり上限値や下限値が設定されないことには注意が必要です。

Q11:企業年金拠出額に上限はあるのでしょうか?

企業年金拠出額の上限は、企業の年間拠出額の合計が年間給与総額の8%以下であること、また企業と従業員個人の年間拠出額の合計が企業従業員の給与総額の12%以下であることと定められています。給与総額の値は、前年度または当年度のいずれも使用することができます。

Q12:企業年金の納付停止、再開と追納

(一)企業が営業損益やリストラ、M&Aなどの特別な事情により基金への拠出義務を果たせない場合、企業の拠出は停止され、同時に従業員の個人納付も停止されます。なお、基金への拠出を継続できない事由が消滅した後ならば、基金への拠出と従業員の個人負担分の納付を再開することができます。企業年金拠出再開の際には、企業および従業員は、経済状況に応じて、原則として3年を超えない範囲で、停止時の制度内容に従って遡及して基金を追納することができます。

(二)自己都合による個人負担分納付の停止・再開を申請する従業員は、「企業年金拠出停止(再開)申請書」に記入し、企業の承認を経て個人負担分納付を停止(再開)することができます。個人負担分納付の停止中は、それに伴い企業拠出も停止しますが、個人口座はそのまま管理されます。個人負担分の納付が再開される企業拠出も再開されますが、個人負担分納付停止期間中の追納はできません。

Q13:欠勤または長期休暇、退職などで不在の従業員に対しても、企業年金を拠出しなければなりませんか?

企業年金制度へ加入している従業員分については、原則として企業年金を拠出しなければなりません。企業年金は「五険一金」と同じように扱われるのです。