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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『東麗先端工程技術(上海)有限公司 董剛 董事長・総経理 インタビュー!』2024/1/8

<strong><font style="font-size:19px">本社と現地法人の関係は「郷に入っては郷に従え」「百聞は一見に如かず」 </font></strong>

本社と現地法人の関係は「郷に入っては郷に従え」「百聞は一見に如かず」

<strong><font style="font-size:19px">——東麗先端工程技術(上海)有限公司 董剛 董事長・総経理</font></strong>

——東麗先端工程技術(上海)有限公司 董剛 董事長・総経理


 
東麗先端工程技術(上海)有限公司
董剛 董事長・総経理

 

武漢測絵科技大学(現:武漢大学)で電子計測機器の学士号を取得後、同大学の講師を務めながら画像処理の修士号を取得。その後、日本の文部省から奨学金を得て日本に留学、1995年に大阪大学で人工知能及びロボットビジョンの博士号を取得。同年、東レエンジニアリング株式会社に入社し滋賀県の技術センターに配属され主席エンジニア、海外事業企画部主幹等の職を経験。2004年に駐在員として中国に赴任し、主に液晶ディスプレイ、半導体、リチウムイオン電池等の関連設備の国内業務を担当。2006年から同社の董事、2019年から董事総経理を歴任、2021年6月より董事長総経理に就任し、現在に至る。

東麗先端工程技術(上海)有限公司は、1993年に設立された東レエンジニアリング株式会社(以下、”TRENG”)の中国駐在員事務所を前身とする。2002年にTRENGの100%出資により、中国法人(上海華麗諮詢有限公司)が設立され、2022年3月に、東レのグループ企業であることを明確に表示するため、現在の社名である「東麗先端工程技術(上海)有限公司」に変更する。現在、上海には本部と浦東に二つの分公司のほか、北京、深圳、成都に分公司があり、精密機械、設備の修理・据付・調整、エンジニアリング技術・管理のコンサルティング、精密機械・エンジニアリング設備・部品・ソフトウェアの販売を行っている。

「現在当社では、日本で開発製造した製品の販売支援と中国のお客様向けの技術サービスに注力しています。しかし、中国市場特有のニーズに対応する製品開発は、中国で行う方がより効率的だと考えています。特に中国では、リチウムイオン電池の需要がEV用途で拡大しており、将来的には蓄電池用途での需要も拡大が見込まれるため、リチウムイオン電池関連の新技術について、本社と連携して中国での設計開発を検討したいと考えています」と董剛董事長総経理は話す。


 

◆◆◆ 中国ではトップ同士の握手からビジネスが始まる ◆◆◆

現在、東麗先端工程技術の取引先は、ほぼ100%中国ローカル企業である。中国企業とのビジネスで最も大切なのは、トップとの人脈だと董剛董事長総経理は語る。「日系企業とのビジネスの場合、ほとんどは部長や課長クラスで決まり、大きなプロジェクトでない限りトップが直接に関わることは多くありません。しかし中国企業の場合、事情は異なります。トップ同士が直接会って握手を交わさなければ、契約がどのように進展するか予断を許しません。以前、ある中国企業の購買総監と商談すすめ、契約成立寸前までこぎ着けたにも関わらず、相手企業の総経理からの許可が得られず商談が止まってしまうという苦い経験がありました。これは日本のビジネス習慣では到底考えられない事態ですが、この時中国ではトップとのコネクションが非常に重要なのだと痛感しました。本社もこの文化の違いを理解しており、定期的に本社のトップが来中し、お客様を訪問しています」


 

◆◆◆ 現地法人のマネジャー、そして駐在員に必要な能力とは ◆◆◆

強い責任感、率先垂範、そしてバランス感覚こそが、チームを成功に導くマネジャーに必要な三つの能力だと董剛董事長総経理は語る。「お客様が問題に直面した際、その問題が解決するまで我々は責任を持ち、きちんとサポートする。同じように部下が困難に遭遇した場合も、しかっりバックアップする。それが責任感です。そして率先して行動し、部下に模範を示す率先垂範です。まず自分がやって見せなければ、部下はついてきませんからね。また、各メンバーの能力に応じて業務や裁量を適切に分配するバランス感覚も重要です」

それに加え駐在員には、もう一つのバランス感覚が求められると董剛董事長総経理は自身の経験を踏まえてこう話す。「現地法人に駐在しても、自分は本社から来たという意識が強すぎて、上から目線で現地法人を見てしまう傾向があります。しかし、そのような姿勢だと、現地の社員は自分たちの考えを理解してくれないと不信感を持ってしまいます。これがお互いの間に壁を作り、仕事の進行を阻む原因となります。『郷に入っては郷に従え』という言葉があるように、現地に駐在する以上は、現地の立場を理解し、それに合わせることも必要です。それと同時に、本社と現地法人の両方の視点を持つことも非常に大事です。このようなバランス感覚が駐在員には求められます」

「本社と現地の認識のギャップを埋める」―まさに日系企業が中国市場で成功する鍵であるが、多くの駐在員や現地社員が頭を悩ませている。「それは容易なことではありません。そのために我々は積極的な取り組みを行っています。『百聞は一見に如かず』、定期的に日本本社から社長や役員だけでなく各事業部の責任者にも中国へ来てもらうようにしています。彼らには現地の状況を直接見て、感じてもらいます。この現地訪問を通じ、日本の理論だけでなく、中国の実情を体験してもらうことで、より深い理解を促します。さらに、我々のお客様にも日本本社へ訪問していただき、トップとの面会の機会を提供しています。これにより、お客様自身が我々の企業理念や文化を直接理解することも容易になります」


 

◆◆◆ 現地社員がより深く技術を学べるよう日本への駐在派遣を制度化 ◆◆◆

優秀な人材を惹きつけ、モチベーションを維持・向上させるための取り組みにも力を注いでいる。「年末の総括会議では、従業員を表彰しています。特に、従業員一人一人を大切にするために、勤続5年、10年、15年、20年と、5年ごとの勤続記念表彰を行っています。そのほか教育制度も重視しています。当社の中国人社員にも日本への出張を設定するほか、1年間の駐在員として日本に派遣し、本社の業務体験をさせることで、技術の深い理解を得る機会を提供しています。彼らが日本の技術をより深く学ぶことで、帰任後は技術関連のトラブルにも自社の力で対応できるようになり、日本の企業文化や働き方を理解することで、相互理解の架け橋となることを期待しています」と董剛董事長総経理は話す。

 

◆◆◆ 本社と現地法人が人材を補完しあえる人材活用システムを築きたい ◆◆◆

最後に、今後の中国におけるビジネスの展望を尋ねた。「当社が取り扱う半導体、ディスプレイ、バイオ、リチウムイオン電池といった領域は、中国市場でもまだまだ伸びしろがあります。その大きな潜在市場とビジネスチャンスを捉えることは、当社の積極性と戦略次第と言えます。中国市場は競争の激しい市場ではありますが、「行穏致遠」の精神を持ち続け、一歩ずつ確実に前進すれば、我々は明るい未来を切り開くことができると確信しています。

また、人材の活用については、日本の会社では平均年齢が45歳前後のケースが多く、30代の中間層が薄い一方、中国現地法人の平均年齢は35歳前後で、まさしく日本の本社で欠けている層が補完されています。このような年齢構成の違いを活用することで、グローバルなビジネスチャンスをつかみ取るための人材活用システムを構築することを目指しています。本社と現地法人間における人材の壁を取り除くことで、真にグローバルな視点からビジネスを展開し、ビジネスのスピードを維持することが可能であると確信しています。若手優秀社員のモチベーションについては、報酬福利はもちろんのこと、それ以外に成長の機会と会社の将来性を見せることも欠かせません。これからも私たちは、中国市場での成功と発展を追求し続けます」と董剛董事長総経理は力強く語った。


中智の感想:

在中日系企業の中でも数少ない中国籍経営者であり、博士号を取得し大学で教鞭をとった経験のある董剛董事長総経理は、社員の成長育成を非常に重視しています。10月に長沙で開催されたボアオ・アジアフォーラムでは中智の招待で出席していただき、ボアオ国際人材メンターに認定されました。中智日本企業倶楽部智櫻会の【未来・未定】メッセージのボアオ国際人材メンター特別編では、「人材を熟知し、活用する企業のみが明るい未来を掴むことができる」というメッセージを贈っていただきました。インタビュー中、ユーモアを交えた語り口に、時が経つのも忘れてしまいました。ゴルフを趣味とする董剛董事長総経理はとても健康的で、スマートなイメージが印象的でした。


董剛董事長総経理とボアオ・アジアフォーラム潘基文理事長、中智集団経営陣一行との集合写真 (2列目右から8人目)


中智日本企業倶楽部智櫻会冯串紅部長一行と董剛董事長総経理との記念写真

※「会社名、役職名はインタビュー記事発表時の名称です」