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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『上海特思尔大宇宙商務諮詢有限公司 山下栄二郎 董事長・CEO インタビュー!』2021/11/26

<strong><font style="font-size:19px">常に最新の技術と質の高い人材でサービスを提供し続ける </font></strong>

常に最新の技術と質の高い人材でサービスを提供し続ける

<strong><font style="font-size:19px">——上海特思尔大宇宙商務諮詢有限公司 董事長・CEO 山下栄二郎氏</font></strong>

——上海特思尔大宇宙商務諮詢有限公司 董事長・CEO 山下栄二郎氏


 
上海特思尔大宇宙商務諮詢有限公司
董事長・CEO 山下栄二郎氏

 

関西学院大学卒業。株式会社リクルートを経て、2000年にトランスコスモス株式会社へ入社。コンサルティング部長などを経て06年に中国へ赴任し上海微創大宇宙信息技術有限公司 董事COOに就任。2013年に上海特思尓大宇宙商務咨詢有限公司(トランスコスモスチャイナ) 董事長総経理に就任し、現在はトランスコスモス株式会社専務執行役員 グローバル事業統括副責任者兼上海特思尓大宇宙商務咨詢有限公司 董事長・CEOを務める。

 

◆◆◆ 経済の発展に合わせて事業領域を拡大する ◆◆◆

トランスコスモスは、1966年に電算処理の会社(当時、丸栄計算センター)として設立され、半世紀以上の歴史を有する。「設立当時、主に企業からの情報入力の請負業務を行っていました。90年代に入ると、企業や個人の間でパソコンが急速に普及し始め、それに伴いテクニカルサポートの需要が高まりました。そこで当社では、パソコンメーカーのテクニカルサポートを請け負うコールセンター事業を展開し、これにより会社が大きく飛躍するきっかけとなりました。2000年代に入ると、デジタルマーケティングの分野へ進出し、さらに2010年頃からEコマースのサポート業務を展開しています。2015年にはテレビ通販の会社を買収し、これまでのBtoBからBtoCへ新たな領域へ事業を展開しています」と、山下董事長・CEOは話す。

トランスコスモスは現在、世界30の国と地域に171の拠点を展開している。「95年に、当時世界の工場として存在感を増していた中国で、日本向けのオフショア開発を請け負うための現地法人を天津に設立したのが中国事業の始まりです。その後、中国経済は順調に成長し、世界の工場から世界の市場へと変化を遂げつつある中で、06年から中国国内事業をスタートしました。現在は、従来からのオフショア開発のほか、コールセンターのアウトソーシング事業やECのワンストップサービス事業等を中国国内向けに展開しています。そのほか、グループ会社では日本のOTC薬品の越境販売を手がけています」と、中国での事業内容について山下董事長・CEOは紹介してくれた。

中国進出当時、日本向けのオフショア開発をメイン業務としてスタートした同社だが、今では中国国内向けのコールセンター事業やECのサポート事業の売上比率の方が高くなっている。

「現在、コールセンターは上海に4ヶ所あるほか、北京、天津、西安、武漢、合肥、長沙等にもあり、合計で約4000名が働いています。お客様は主に中国のスマートフォンメーカーや金融機関等の大手国有企業や民営企業です。また、ECのサポート事業は、日本の売り上げを超える勢いで伸びており、中国全体で約8000名が働いています」

同社は早くから中国国内でECのサポート事業に進出しており、Taobao Partner (TP)の第一回認定企業23社のうちの一社に認定されている。


 

◆ 「員工満意」をコアバリューに掲げ、積極的に従業員の満足度向上に取り組む ◆

トランスコスモスでは、従業員の満足度向上を特に力を入れて取り組んでいる。「当社では、『お客様の満足の大きさが我々の存在価値の大きさであり、ひとりひとりの成長がその大きさと未来を創る』を経営理念としています。お客様の満足と従業員の満足は密接に繋がっています。従業員の満足度が低ければ、離職率が高まります。新たに入社した人は、すぐに高いパフォーマンスを発揮できる訳では無いので、成長するまで時間を要し、どうしてもお客様へのサービス品質に影響を与えます。そこで、トランスコスモスチャイナでは、独自のコアバリューに『員工満意』を掲げて積極的に従業員の満足度向上に取り組んでいます」と、山下董事長・CEOは語る。

従業員満足度向上のため、同社では、毎年定期的に従業員満足度調査を実施し、人事制度や福利制度の改善に役立てており、その中から生まれたユニークな制度がある。

「勤続5年や10年という節目に、平日5日連続で休暇を取得すると5日間の有給休暇とボーナスが貰える制度を設けています。つまり5日連続で休暇を取得しなければボーナスも貰えません。この意図は、この連休を利用してゆっくり旅行を楽しんでもらうことにあります。従業員本人は、5年や10年の節目に同僚から祝福を受け、会社からは表彰され、しかも休暇とボーナスを貰えるのですから、満足度があがります。また、従業員が旅行先で撮った写真とコメントを冊子にして、他の社員に配ることで、自分たちも5年、10年と頑張ろうというモチベーションアップにも繋がるのです」と山下董事長・CEOは説明する。


 

◆◆◆ 従業員のライフスタイルやキャリア形成に合わせた働き方を尊重 ◆◆◆

人事制度面でも、中国独自の工夫を加えている。「職位階層を日本本社の人事制度よりも細かく設定し、昇進昇格のスピードを早めており、中国では半年ごとに昇進するチャンスを与えています。ちなみに、日本では3年に1度昇進のチャンスがあれば良い方でしょう。また、マネジメントとスペシャリストの二つのラインに分ける複線型人事制度を採用しており、給与をなるべく保障しつつ、各ラインを異動できるようにすることで、従業員一人ひとりのライフスタイルやキャリア形成に合わせた働き方の実現を可能にしています」

中国全土に拠点があると、各拠点への人材の異動が必要な場合がある。「上海は、他の都市と比べ人材が豊富なため、地方の拠点へ支援に行ってもらうことが必要になる場合があるのですが、中国では日本のように会社の辞令ひとつで自由に転勤してもらう訳にはいきません。そこで、転勤手当を手厚くしたり、転勤期間を3ヶ月や半年と短期間にしたりすることで、同意を得られやすいよう配慮をしています。理想としては、2年間くらい地方で頑張ってもらいたいのですが、なかなか難しいのが現実ですね」

また、トランスコスモスチャイナでは、積極的に障がい者支援活動を行っている。「当社では、障がい者雇用を推進しています。例えば、耳の不自由な方にとってコールセンター業務は難しいですが、チャットでのお客様対応は可能です。この様に障害に合った働き方ができることで、社会の一員として貢献することの達成感を得ることができます。また、日本と中国の障がい者学校をオンラインで繋げての文化交流を計画していましたが、新型コロナの影響で実現できていません。来年は是非とも実現したいと考えています」


 

◆◆◆ 思考を止めず、行動しながらも考え続けること ◆◆◆

社員一人ひとりが持っている力を100%発揮できれば、どんな会社でも成功できると山下董事長・CEOは語る。

「一人ひとりが最大のアウトプットを発揮できるようするには、少し高めの、頑張れば達成可能な目標を与えることが重要です。しかしその目標設定が難しいのは確かです。それを可能にするには、直接のコミュニケーションが大切だと考えています。コミュニケーションを通して、この人の能力は何か?目指しているものは何か?いま困っていることは何か?これらをきちんと理解できてこそ、その人が頑張りたいと思える目標を共有することができるのです。ただし、目標を共有して終わりではありません。たとえ半年後、一年後の目標を設定したとしても、経営環境やお客様のニーズは日々変化しています。目標を与えるだけではなく、思考を止めず、行動しながらも考え続けることで、新しい未来を切り拓くことが出来るのです」

 

◆ デジタル分野で常に最新の技術と質の高い人材でサービスを提供し続けたい ◆

インタビューの最後に、今後の中国ビジネスの展望を尋ねた。「お客様のビジネス環境は日々変化しています。新しい局面に直面したとき、お客様に信頼して相談していただける会社、その際に的確な答えや方向性を一緒に考えて見いだせるような会社で有り続けたいと考えています。具体的にいうならば、中国政府はデジタルトランスフォーメーションを推進しているとおり、当社もデジタル分野で常に最新の技術と高い能力や向上心を持った人材でサービスを提供し続けたいと考えています。これを実現し続ける事ができれば、これからもトランスコスモスチャイナは発展し続けることができるものと確信しています」


中智の感想:インタビューの中で、山下董事長・CEOは従業員満足度の大切さを何度も強調していたのが印象的でした。コールセンターやECサービスという、一般的に離職率の高い業界で、いかに従業員の定着を促し、お客様サービス品質を高めるか、そのひとつの答えであると感じました。
インタビューの後、トランスコスモスチャイナのオフィスを見学させていただきました。清潔で明るいオフィス空間、清潔なトイレ、そして落ち着いて搾乳や哺乳ができるように哺乳室まで設けられているのを拝見し、従業員に対する心遣いの細やかさに感心しました。
また、今年智櫻会が主催した「未来—経営者メッセージ」企画では、「思考を止めるな」と題するメッセージを山下董事長・CEOから寄せていただきました。「『仕方ない、こんなもんだろう』と思考を止めるのは楽だけど、真の答えではない。行動しながらも考え続けることで更なる成長に繋がり、新しい未来を切り拓くことが出来る」
山下董事長・CEOには、日本へ出張される直前のタイミングにも関わらず、わざわざインタビューの時間を作っていただき有難うございました。これからの10年、中国でのトランスコスモスチャイナの更なる発展をお祈り致します!