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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ

『似鳥(中国)投資有限公司 杉浦 栄 総経理 インタビュー!』2021/12/9

<strong><font style="font-size:19px">中国スピードに合わせた教育制度で店舗拡大を目指す </font></strong>

中国スピードに合わせた教育制度で店舗拡大を目指す

<strong><font style="font-size:19px">——似鳥(中国)投資有限公司 総経理 杉浦 栄氏</font></strong>

——似鳥(中国)投資有限公司 総経理 杉浦 栄氏


 
似鳥(中国)投資有限公司
総経理 杉浦 栄氏

 

1997年に株式会社ニトリ入社。日本国内の店舗勤務を経て計3店舗の店長を務める。その後、家具商品部での商品開発、近畿エリアの店舗マネジャー等を経て、2017年に台湾法人の董事長兼総経理に就任。2020年から似鳥(中国)投資有限公司の総経理に就任し現在に至る。

 

◆◆◆ 中国は、なくてはならない大切なパートナー ◆◆◆

ニトリは、1967年に現会長の似鳥 昭雄氏が、北海道札幌市で似鳥家具店を創業したことに始まる。その後、北海道から全国へ、そして全世界へと着実に成長を遂げ、今では全世界で769店舗(インタビュー時)を展開するまでに成長している。現在は、家具のほかアパレルや飲食店も展開しており、ファッション、家具、インテリアの生産から物流、販売まで一貫して自社で行っている。

ニトリにとって中国は特別な国だと杉浦総経理は語る。「ニトリでは早くから海外での調達や生産を積極的に推し進めてきました。現在ニトリグループが扱う商品の90%以上を海外から調達しています。その中でも、中国とは96年と早くから取引を開始しており、現在取引をしている中国のサプライヤー数は約580社と、海外サプライヤーの8割近くの割合を占めています。当社にとって中国は、なくてはならない大切なパートナー国となっています」

その中国本土へは、2014年に初出店を果たす。「ニトリグループのものづくりに大きく貢献してきた中国の皆さまへ恩返しがしたいという想いから、中国への店舗展開をスタートしました。現在、中国本土に42店舗、そのうち上海に9店舗、江蘇省に13店舗を展開するほか、天津、湖北、浙江、四川、広東にも展開しています。これを2023年までに100店舗に増やすことを目標として掲げています」と杉浦総経理は話す。※店舗数はインタビュー時の数


日本と中国では、消費者の好みに違いはあるのだろうか。「日本と中国のライフスタイルの違いから品揃えに若干の違いはあるものの、基本的に同じ品揃えになっています。好みについては、日本のお客様はシンプルなデザインを好まれるのに対し、中国のお客様はファッション性の高いデザインを好まれる傾向が強いように思います。デザインやコーディネートを強みとする当社にとっては、中国のお客様は提案のやりがいがあると感じています。また、中国のお客様は生活環境の変化に慣れているせいか、新しいものを取り入れることにより積極的なように感じます」と杉浦総経理は日中の消費者の違いについて話す。

 

◆◆◆ 知名度のアップが、人材採用に有利に働く ◆◆◆

2023年までに100店舗という目標にむけて、杉浦総経理は就任してから出店を加速している。「2014年に中国本土に初出店して以来、店舗作りや商品の調達が円滑にできる体制を整えることができましたが、人材の確保に課題を抱え、思うように出店ができませんでした。日本の場合であれば、店長になるまでに早くても入社から7、8年を要するのですが、このペースでは中国の発展スピードについて行くことはできません。この反省点をふまえ、教育体制を改革し、3年で店長を育てる教育システムを構築しました。いよいよ準備が整い、これから出店ペースを加速していこうとしているところです」

出店ペースを増やすには、店長だけではなく店舗スタッフの確保も心配となる点である。「店舗が増えるにつれ、ニトリを知っている方が増えてきたのは大変嬉しく思います。おかげさまで以前よりも採用がやりやすくなっています。採用にあたり、以前であればニトリという会社の説明から始めなければならなかったのですが、最近では詳しく説明をしなくても、どの様な会社か理解し応募してくれている方が増えています。人材の採用には、知名度が非常に重要な要素であると実感しています」

ニトリグループではこれまで、国内外での自然災害に対する義援金や、さまざまな文化活動・教育活動への支援を積極的に行っている。「ニトリグループのものづくりに大きく貢献していただいている中国の方々へ恩返しがしたいという似鳥 昭雄会長の熱い想いから、2017年に中国で奨学財団を設立し、経済的な理由で就学が困難な学生に対して奨学金を支給しています。今年は約500名の学生に奨学金を手渡しました」


 

◆◆◆ トップが明確なゴールイメージを示すことが大切 ◆◆◆

杉浦総経理は大学卒業後、97年にニトリへ就職する。「97年に私がニトリへ入社した当時、店舗数は33店舗と小さな会社でしたが、2002年までに100店舗を達成するという目標を掲げていました。たった5年で100店舗まで拡大するなんて、正直に言って不可能だろうと思っていましたが、またたく間に拡大し、最終的に目標の一年遅れで100店舗を達成する事ができました」

今の中国の状況は、杉浦総経理が入社した当時と状況が似ているという。「当社では、中国の店舗数を現在の42店舗を2023年までに100店舗にするという目標を掲げています。商品はあり、調達も出店も大きな問題はありません。あとは人材さえ確保できれば、目標は十分に達成可能であると考えています」

中国での事業の成功には、ビジネスに対する柔軟な考え方と中国人社員とのコミュニケーションが重要ではないかと杉浦総経理は考えている。「中国で経営をする中で、日本以上に変化のスピードが速いことを実感しています。それこそ今までやってきたことをゼロにして、新しいことに取り組めるくらい柔軟な考え方をしないと、変化のスピードに取り残されるように思います。また中国人社員とのコミュニケーションでは、なるべく明確に結論から伝えるようにし、曖昧な言い方をして迷わせないよう注意を払っています。そして中国人社員は、一致団結して目標に向かう場合に強い力を発揮できるので、トップが明確なゴールイメージを示してあげることが重要だと思います」


上海徐家汇店


上海宝山日月光中心店  

 

◆◆◆ 住まいの豊かさを中国の人々に提供したい ◆◆◆

インタビューの最後に、今後の中国ビジネスの展望を尋ねた。「住まいの豊かさを世界の人々に提供するというニトリグループのロマンを、中国においても実現できるよう、お客様により近い場所に出店を増やし、コーディネートされた高品質の商品を、お客様に提供していきたいと考えています。そして、私がニトリに就職してから、小から中、中から大へと会社が成長する過程の中で、自分も一緒に成長するという経験を、もう一度中国の社員たちと一緒に経験したいと考えています」


中智の感想:今回のインタビューは、宜得利家居徐滙店で行いました。店内は洗練されたデザインの家具が並べられ落ち着いた雰囲気は、日本のニトリそのままでした。
急速な出店を実現するには、人材の育成が鍵となります。そのために杉浦総経理は、短期間に店長を育てる教育制度改革に取り組まれました。特に大都市では店舗スタッフなどのサービススタッフの募集が難しくなっていますが、店舗数が増えたことで知名度が上がり、逆に以前より採用がやりやすくなっているそうです。これは、新卒採用でも同じことがいえ、会社の知名度と優秀な学生の募集には一定の関係が見られます。
2023年に100店舗という目標にむけて、杉浦総経理はこれまで日本、そして台湾で積んできた経験とノウハウに中国スピードを加え、経営に取り組んでいます。