今回の講座には、イオン、凸版、堀場(中国)、東芝電子、久保田、バンドー、清水建設、ADK集団中国、三菱UFJ銀行、ミズノ、三井繊維、等の会員企業から管理部長や人事高官など高級管理者の方々にご参加いただきました。
開講に先立ち、中智日本企業倶楽部・智櫻会部長の馮串紅より、中智諮詢人力資本データセンターについての紹介を行いました。「中智諮詢人力資本データセンターは、人的資源業の調査研究とサービスを行う機関で、15年に渡る調査やデータ提供の実績を有しており、業種ごと国ごとの調査結果は多くのコンサルティング機関に引用されています。同センターは今年既に発表会を開催していますが、今回の講座は中智日本企業倶楽部会員企業様に限定された特別なものです。翌年の予算制定の参考資料として、会員企業の皆様にご活用いただければ幸いです」と述べました。
続いて、具体的なデータを共有する前に、日中友好の歴史と近年の日中間の経済環境について紹介しました。その中で、今年の日中間の貿易額は3000億ドルを超え、人の往来はのべ1200万人に達し、毎週の直行便は1000便を超えていること、また日中間の友好姉妹都市は250組を超えていること等を紹介しました。
講師は中智諮詢人力資本データセンタープロジェクトマネジャーの文昭芸氏と高級商品マネジャーの朱珠氏が担当しました。文先生と朱先生は、長年にわたり人的資源に関するコンサルティングとプロジェクトの経験を有し、多くの著名企業へ専門的サービスを提供しています。
講義はマクロ経済のトレンド、技術イノベーションや就業人口の減少が及ぼす影響を踏まえ、人材市場における招聘、慰留、昇級の背景とデータや、人気職位や熟練工、新卒生の賃金状況、福利厚生管理の革新と弾力化、差異化などのテーマについて展開しました。
文氏はまず、データを用いてマクロ経済全体のトレンドについて分析し、GDP成長率は鈍化しているが、年初に設定した成長目標を達成していると述べ、固定資産投資の増加や輸出の減少を上回る輸入の減少等が寄与していると指摘しました。
最近の人材市場については縮小傾向がみられると指摘し、原因として就業人口の減少だけではなく、産業構造の変化に伴う人材のアンバランスがあると述べ、業務開拓や製品研究開発、ソフトウェア開発などの人気職位では人材が逼迫していると指摘しました。
続いて中智諮詢が行った最新の調査研究データを共有しました。まず、2019年上半期全体の離職率について、自主離職率は低下したが、受動離職率は上昇していると指摘しました。ここ10年の自主離職率は、経済成長の鈍化により従業員が転職に慎重になっていることから、全体的に安定的な下降トレンドにあると述べました。さらに投資国別、地域別、そして業界別の離職率データを紹介し分析を進めました。
次いで、給与調整率のデータを共有しました。国内全体の昇給率は2011年から低下傾向にあり、2019年は7%となっていると述べました。また、ここ10年の給与調整率のトレンドはマクロ経済の動向とほぼ一致していると指摘しました。投資国別の給与調整率をみると、中国民営企業の全体昇給率が調査以来、初めて8%を下回り、2019年に昇給をしなかった企業は全体で約27%に達したと述べました。さらに、都市別、業界別の昇給率についても紹介し分析を進め、製造業及び自動車業界、貿易業、ハイテク・インターネット業界の職種や階級別の給与データを取り上げ詳しく解説しました。
新卒生の初任給について、ハイテク・インターネット、金融業界の新卒初任給が依然として上位を占めており、特に人工知能などの人気職位では初任給の上昇率が20%に達すると述べました。また、重点大学の初任給は普通大学より20%から30%上回っていると指摘しました。
最後に、福利管理の現状と実践の趨勢について紹介しました。その中で、第三次産業にフレキシブル福利を実施する企業が多く、マスコミ業界では40%に達すると述べました。一般企業の一人あたり年間補充福利コストは、およそ5000元以内に集中しており、また高級管理層の年間補充福利はブルーカラーの約6.5倍に及ぶと指摘しました。
休憩を挟み行われた質疑応答では、参加者の皆様から具体的なデータの構成や見方、統計方法、日系企業の手当てやインセンティブの実施状況などについて熱心に質問されました。
その後、会員交流タイムに入りました。参加企業を代表して、ミズノの褚崢嵘人事総監とADK集団中国の徐敏人的資源総監に自社の人事制度の現状や取り組みについてお話していただきました。
ミズノの褚総監には、伝統的な製造型日系企業の多くが直面している課題について共有していただきました。その中で、関連会社の販社と工場それぞれの業績評価や給与調整の方法について紹介していただき、特に工場では若年人材の採用が難しいと語り、平均年齢が高くなるに伴い定年退職者が増えてきているが、補充が難しい状況だと述べられました。
ADK集団中国の徐総監には2018年から取り組んできた人事制度改革についてお話しいただきました。給与制度の三原則として対外的な競争力、対内的な公平性、社員に対するインセンティブを挙げ、自社の給与制度の設定方法について具体例を上げながら詳しく説明していただきました。その中で、社員のモチベーションやコア人材の引き留めには、制度だけではなく企業文化の育成やCSR活動も重要だと指摘し、特にCSR活動に関しては、自社単独では、なかなかやりたくても出来なかったが、中智上海から上海市の志願者組織の紹介をきっかけに、積極的に行う事が出来るようになったと述べられました。
半日間の集中的な学習を経て、「2019人的資本調査研究成果発表&日系企業報酬福利インセンティブの動向」講座は盛況のうちに終了しました。参加者たちは多くの参照データを得ただけでなく、データの背景やデータが企業の予算策定及び事業計画にもたらす影響、そして会員企業から生の声を聞くことができました。
日本企業倶楽部・智櫻会は今後も引き続き労務や法務、新人研修、管理職研修、専門技能研修など各方面への講座を開講して参ります。多くの会員企業様の積極的なご参加をお待ちしています。