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中国労働市場での秀逸な人材の確保と慰留対策について(四~六)(2013年2月15日)

2013年2月15日
寄稿:範本鶴

(一~三)はこちら→

四、従業員に十分な信任を与える

 国際的企業における中国人従業員は時として一種の挫折感を味わうことがあるが、その原因は信任にある。もし現地の従業員が信任を得られなければ、彼らは会社から去ってしまうだろう。

 マズローの「発達段階」理論においては、尊重、信任の欲求は高次に属する。彼は全ての人が高次の欲求において承認、依存、尊重や信頼を得たいと考えており、その欲求を満たすには権威や地位を得ることが必要なのである。

 現地の従業員が非常に重視しているのは、彼らの業務範囲において自身の能力を発揮し得るか否か、独立して仕事を展開できるかである。もし十分に授権がなされていなければ、彼は暗中模索するしかなくなり、操り人形と化した責任者となるしかなくなる。彼は主体性を発揮できず、創造性は更に発揮できないであろう。

 頻繁に業務報告を行わなければならないとなれば業務効率に大きな影響を及ぼし、トップダウン方式の昇進システムでは現地従業員の昇進機会も限られてしまう。ゆえに、会社はできるだけ従業員を自身の有利不利に関する事項の決定の場に参加させ、それを通じて会社が従業員を尊重している態度を示すべきである。また自社の従業員を企業の施策決定に関わらせ、従業員に対する信任をよく示すべきである。ベテラン従業員に対し最も重要なのは上司の感謝であり、賃金の調整だけではないのである。これら信任、尊重の問題も現地の管理者層が挑むべき壁なのである。

 

五、円滑なコミュニケーション

 まず、異文化を背景とした習慣、母国語の不一致があるゆえに、言葉でのコミュニケーションは困難である。次に、異文化であるがゆえの思想、思考法及び世界観の違いは、多文化集団を結成する上で巨大な驚異となり、集団の空中分解を引き起こしかねないものである。この他、多文化集団においては宗教や生活方法の差異も存在するので、円滑なコミュニケーションをより心がけねばならない。

 円滑なコミュニケーションについては多くの理論が存在する——人間関係論、自我意識論、公開評価論など。しかしどんな理論であれ、他でもなくオフィシャルまたはアンオフィシャルなコミュニケーションなのである。オフィシャルなコミュニケーションとしてよく見られるのは、各種会議、チーム会議、個別面談等である。中国人の「面子文化」を鑑みると、アンオフィシャルなコミュニケーションを多めに採用する方が良いと思われる。例:コーヒーブレイク、お茶会、小旅行、演劇観覧、会食、メール、年賀状など。このような人情味のある活動を通じて、シリアスな話題を話しやすくし、距離を縮めて壁を無くすことで、お互いの理解を深め団結力を深めることができるのである。

 

六、十分な発展機会を提供する

 調査研究によると、自身の発展機会を大いに与える企業においては、従業員が非常に一生懸命働き、忠誠心、生産性も高く、更に高みを目指して努力する。従って企業が管理政策を行うときには、従業員の利益をより考慮しなければならない。従業員を目標に向かって努力させ、目の前に人参をぶら下げておき、併せてそれを宣伝し従業員に周知しなければならない。特にキャリアアップにおいて、従業員に会社が彼らのキャリアライフ、昇進を真剣に考えていると信じさせなければならない。これを行って初めて、彼らのために継続的な職場教育、技能訓練を施し、彼らにより高い職位の獲得や抜擢を行うことができるのである。

 

 上述の6項目は特別に新しいことではないが、優秀な人材の獲得や確保に必要不可欠な経験談である。