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【判例】企業は従業員の賃金から罰金を控除できるか?(2014年2月25日)

【判例】企業は従業員の賃金から罰金を控除できるか?(2014年2月25日)

案例:

 張某は某社職員であり、技術管理の業務に従事していた。会社には勤怠管理制度が設けられており、従業員の遅刻及び早退一回につき员工罰金100元、しかも8:30の出勤に1分でも遅れれば遅刻とされた。しかし張某の住居と会社はやや遠く、通勤路でよく渋滞が起っていた。張某は就業開始時こそ何とか就業時間に間に合わせていたが、後に度々遅刻するようになった。会社側は張某の賃金から毎月500元前後を差し引いていたが、 張某の月給は2000元前後であった。罰金が大きすぎる、張某は会社の勤怠管理制度が苛烈であり、賃金から罰金を差し引くのは賃金の控除に当たるとの認識を示した。しかし会社側は、勤怠管理制度は使用者の自主使用権であり、社員として当然に守るべきだと主張し、双方間に争いが起った。

争点:

 1. 会社の勤怠管理制度における罰金制度は合法か?

 2. 会社は労働者の賃金から直接罰金を控除できるか?もし可能なら、その額に制限はあるか?

解説:

 現在我が国の多くの企業が用いている人事管理のうち、特に賞罰制度、勤怠管理についてはよく懲罰規定が採用されているが、この傾向は国有企業において特に顕著である。では、使用者が労働者に対し懲罰規定を用いることに法的根拠は必用だろうか?

 多くの企業が、懲罰規定の法的根拠を1982年国務院公布「企業職工賞罰条例」第十二条規定の「職工の行政処分は以下に分類される。警告、過失記録、重過失記録、降格、免職、経過観察、追放。以上の行政処分を行う際には、罰金を科すことができる」という規定であると認識している。この条例から見れば、使用者が労働者に処分を科し、罰金を徴収する権利を持つことができると見て取れる。これが罰金の根拠である。

 しかしこの罰金には前提条件があり、それは企業が従業員へ「行政処分」を科すということである。行政処分は行政権の一種であり、当時の我が国の国情と直接関係がある。1982年、我が国の経済が国有経済を主としていた頃、当時の国有企業は官民一体であった。国有企業と政府派一定の行政管理権をもち、国有企業はこれに基づいて労働者へ行政処分を科し、罰金を徴収することができたのである。ゆえにこの条項には適用範囲があり、全人民またはコミュニティの所有する企業及びその従業員にのみ適用されていたのである。

 90年代、国有企業制度改革後政府と企業が分離され、企業は社会の方を向き、独立して自主的に市場経営を始めた。国有企業制度改革の完了に伴い、我が国では現在企業管理において基本的に政府と分離し、行政管理権もそれに伴い消えていった。ゆえに今日国内企業が有しているのは労働者管理権であり行政管理権ではないため、労働者に対し行政処分を行うことは出来ないということになる。

 現在多くの企業で適用している規範制度のうち、罰則規定についてのみ明確な法的根拠が無く(また、罰則規定を禁じる規定も無く)、直接的に罰金を規定することには法的リスクがある。しかし、地方の政策においては、企業が罰金制度を用いて労働者の規律違反に対し処罰を行うことを許している地方もある。もしこの地方の規定に基づき処罰するならば、法的リスクを負わずに済むのである。例えば、深3Wのある地方では、地方条例により使用者が労働者に対し罰金を科すことを認めているため、この地方の企業は規定により、労働者の規律違反に対し罰金を科し、賃金から控除することができるのである。地方に特別な政策規定が無い場合は、現代人事管理において、罰金を科すことで労働者を管理、考査を行うことには法的リスクがある。使用者が労働者より罰金を取る行為は、賃金の控除と見做される可能性があるのである。一旦賃金控除行為が認められると、使用者側が労働者へ賃金を返還したとしても、「労働契約法」第八十五条の規定により、労働者の労働補償行政部への通報により控除された金額の50% 100%に当たる損害賠償金を請求される可能性が出てくる。

 それでは、使用者は労働の賃金を控除することができないのか?と言えばそんなことはなく、「賃金支払暫定規定」第十六条「労働者本人の責により使用者へ経済的損失を与えたときは、使用者は労働契約の約定に基づきその経済的損失の補償を求めることができる。経済的損失の補償は、労働者の賃金より控除できる。但し、その金額は毎月の賃金の20%を超えてはならない。もし控除後の賃金が当地最低賃金を下回るときは、最低賃金を賃金として支払う」とある。すなわち労働者個人の責で企業へ損害を与えたときは、労働契約に応じて経済的損失の補償を求めることが出来、またそれを賃金から控除することができるが、その額は当月賃金の20%を超えてはならないということである。この他法で定める控除を除き、使用者は如何なる理由があっても労働者の賃金を控除してはならないのである。

 ゆえに、使用者から見れば、罰金という方法を用いて人事管理を行うということは現代企業管理から逸脱しており、新しい管理方法を考えるべきである。例えば、業績考課を用いた賃金の見直しで、労働者の日常業務を管理する、などの方法が挙げられる。