【寄稿】「労務派遣暫定規定」十問十答(2014年2月25日)
【寄稿】「労務派遣暫定規定」十問十答(2014年2月25日)
「労務派遣暫定規定」(以下「規定」)が国務院の閣議を通過し、2014年3月1日より施行されます。「規定」の施行は社会の大きな注目を集めていますが、多くの関心を集めている10の問題について解説したいと思います。
1:「三性職位」とは?
答:「規定」第三条に「三性職位」についての明確な規定があります。「使用者は臨時的、補助的、代替的な職位についてのみ派遣労働者を使用することができる」。
いわゆる「臨時的職位」とは、職位の存続期間が6ヶ月を超えない職位を指し、「補助的職位」とは会社の主たる業務に対し補助的な役割を果たす主たる業務でない職位を指します。また代替的職位とは労働者が出産、勉学、休暇などにより一定期間就業できない場合において、代替的に他の労働者を用いることのできる職位を指します。
使用者は派遣労働者の使用について職工代表大会及び職工全体討議にて意見を提出し、労働組合または労働者の代表と協定を締結した上で、社内に公示しなければなりません。
2:労務派遣使用比率はどのように規定されているか?
答:「規定」第四条に「使用比率」について規定されています。「使用者は労務派遣労働者の比率を厳格に遵守しなければならない。使用する労務派遣労働者の数は使用する全ての労働者総数の10%を越えてはならない」。
ここで言う「使用する全ての労働者総数」とは、使用者と労働契約を締結した労働者の数と労務派遣労働者数の和になります。
使用者とは労働契約法と労働契約法実施条例により労働者と労働契約を締結できる使用単位を言います。
3:労働契約、労務派遣協定の成立要件は?
答:労務派遣元は派遣労働者と2年以上の期間を定めて書面による労働契約を締結する必要があります。
労務派遣元は法に従い被派遣労働者の試用期間を定めることができますが、一回しか定めることができません。
労務派遣協定には(1)派遣する職位の名称と職位の性質(2)就業場所(3)派遣人数と派遣期間(4)同一労働同一賃金の原則に基づく賃金の確認と支払方法の規定(5)社会保険費の額と支払方法の規定(6)就業時間と休憩、休暇に関する規定(7)派遣労働者の労災、育児及び派遣期間中の待遇に関する規定(8)労働安全衛生及び訓練に関する規定(9)経済的補償に関する規定(10)労務派遣協定の期限(11)賃金の支払方法と基準(12)労務派遣協定違反の責任規定(13)法律、法規、規定に準ずるその他の事項、を記載する必要があります。
4:労務派遣元の義務とは?
答:まず労務派遣労働者へ労働契約法第八条の事項、すなわち就業内容、就業条件、就業場所、就業における安全衛生、賃金及び労働者の求めるその他の状況や遵守すべき規定、労務派遣協定の内容を通知する必要があります。
第二に、訓練制度を制定し、労務派遣労働者へ業務上必要な知識、訓練、安全教育を施さなくてはなりません。
第三に、国家規定及び労務派遣協定に基づき労務派遣労働者へ賃金を支払い、その他待遇を保障しなくてはなりません。
第四に、国家規定及び労務派遣協定に基づき労務派遣労働者の社会保険費を納入し、社会保険の関連手続を行わなくてはなりません。
第五に、派遣先へ労務派遣労働者の保護や労働安全衛生を遵守するよう督促する義務があります。
第六に、労働契約の解除または終了の際にはそれを証明しなくてはなりません。
第七に、労務派遣労働者と派遣先との間に労働紛争があったときは、これを処理しなければなりません。
その他、法律、法規及び規定に基づく事項を遵守しなければなりません。
5:派遣先単位の義務とは?
答:派遣先単位の履行すべき義務は以下の通りです。
① 国家規定の労働基準を遵守し、労働条件を履行し労働者保護すること。
② 労務派遣労働者遣へ就業内容と労働報酬を告知すること。
③ 時間外手当、ボーナスを支払い、その職位に基づく待遇とすること。
④ 職位に必用な訓練を施すこと。
⑤ 継続して労務派遣労働者を使用する際には、正当な賃金調整を行うこと。労務派遣労働者を他の使用単位へ再派遣してはならない。
6:労務派遣労働者を派遣元へ戻すことができる状況とは?
答: 以下のような状況であれば、派遣先は労務派遣労働者を派遣元へ戻すことができます。
まず、労働契約を締結した時から客観的に見て重大な変化が生じて労働契約を履行できなくなり、派遣先と労働者と協議の結果労働契約を変更できなかったときが挙げられます。この他、破産法の規定に基づき清算を行っているとき、経営困難に陥り、全従業員の10%及び20人以上を減らさなければならなくなったとき、主たる事業や経営方式の変更及び重大な技術革新により、労働契約を変更してもなお人員を削減しなければならないとき、その他客観的に見て重大な変化が生じ、労働契約を履行できなくなったときに、同じような措置が取れます。
第二に、派遣先が破産宣告、業務停止、法令による閉鎖、撤退、解散などで経営不能となったとき、が挙げられます。
第三に、労務派遣協定が期間満了したときです。
労務派遣労働者が派遣元へ戻った後仕事が無い期間があったときは、労務派遣元は最低賃金を下回らないよう、労務派遣労働者へ賃金を支払わなければなりません。
7:労務派遣労働者を派遣元に戻すことができない状況とは?
答:以下のような場合、労務派遣労働者を派遣元に戻すことは出来ません。
① 職業病の危険がある作業に従事する労働者で離職前検査を受けていない、又は職業病疑いによる医学的経過観察期間。
② 職業病や業務による負傷により労働能力を失ったと認定される者。
③ 疾病もしくは負傷による規定内の医療期間。
④ 女性従業員の産前産後休暇。
⑤ 使用単位で満15年以上勤務しており、かつ法定退職年齢より五年未満の者。
⑥ 法律、行政法規の規定するその他の状況。
8:協定変更による同意が無かった場合、労働契約をどのように解除するか?
答:労務派遣労働者が「六」の状況により派遣元へ戻され、改めて派遣する際に現状もしくはそれ以上の労働条件を提示しておきながら労働者が同意しなかった場合、派遣元は労働契約を解除することができます。
同様のケースで、現状以下の労働条件を提示した上で同意を得られなかったときは、労働契約を解除できません。但し、労働者側から契約を解除することはできます。
9:他地域への労務派遣の場合、社会保険をどのように支払うか?
答:他地域へ労務派遣を行うときは、労務派遣労働者は派遣先の所在する地方の社会保険に加入し、その規定に基づき社会保険費用を支払い、社会保険の待遇を受けることになります。
派遣元の支社がその地方に存在するときは、その支社から労働者を派遣し社会保険費を納めます。
派遣元の支社がない場合は、派遣先が代わって労務派遣労働者の保険加入手続きを取り、社会保険費を納めます。
10:三性職位や労務派遣労働者比率の制限を受けない場合とは?
答:外国企業の事務所、または外国金融機関の在中国代表機構などで使用されている労務派遣労働者や、労務派遣労働者として使用されている船員、国際遠洋船員は臨時性、補助性、代替性及び比率の制限を受けません。
派遣先が労働者を海外へ派遣するときや家庭や自然の中で業務をさせるなど場合は、「暫定規定」で言う労務派遣に該当しません。
「暫定規定」に適用されない機関、事業単位で使用される労務派遣労働者も、同様に該当しないことになります。