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【寄稿】現代企業報酬管理制度発展の方向性(2014年03月25日)

【寄稿】現代企業報酬管理制度発展の方向性(2014年03月25日)

 報酬制度は企業に言わせると「諸刃の剣」であり、人材の招聘、奨励、慰留の武器となる反面、使い方が悪いと自身に危機をもたらす。最新の、科学的系統的な報酬管理体制の確立は、企業の知識経済時代におけるサバイバルと競争優位にとって重要な意義を持つものである。また報酬制度の改革と改善も、現在企業が面する緊急の課題と言えるだろう。伝統的報酬管理と比べ、現代的報酬管理には以下のような発展の方向性を見出すことができる。

(1)包括的報酬制度

 報酬とは単純に賃金を指すものではなく、純粋に支払われる通貨による報酬を指すものでもない。それは精神的な奨励、例えばより良い勤務条件、仕事のしやすい空気、成長機会、昇進機会などを含むものであり、またこれら精神的奨励は積極的に報酬体系に組み込むべきものである。報酬のソフト部分とハード部分は完全に結合していなければならず、どちらか片方に偏るとすぐに脱線してしまう。物質と精神の両方を重視する、これが現在提唱されている包括的報酬制度なのである。

 <<報酬と業績考課のリンク >>

 単純に賃金を上げるだけでは奨励効果を望むことができない。報酬体系設計の教科書や資料で繰り返し強調されているように、業績考課と報酬をリンクさせるだけでも従業員の積極性を喚起できるのである。報酬システムの視点から見ると、業績給の出現は報酬に大きな可能性を秘めさせている。既に死に体となっているかつての単一的報酬制度は段々減少しており、個人業績と団体業績を組み合わせたフレキシブルな報酬体系に取って代わられている。

 報酬に奨励性を持たせるためには、以下の方法がよく採られている。

 (1)業績給(ボーナス)と福利比率の増加

 (2)非固定賃金(浮動賃金)比率の増加

 (3)フレックスタイム制度の導入

 (4)従業員を企業経営提携者とする

 (5)業務量ではなく、技能と業績を基準として賃金を決定する

(2)フレキシブルな報酬システム

 賃金等級と職位の降格は相関するものである。フレキシブルな報酬システムは言わば組織の平坦化と考課の絶対化のために機能するものであり、伝統的報酬システムを維持する等級制度を打ち破るだけでなく、企業をリードする従業員の興味を昇進や賃金から、個人的のキャリアアップや能力の成長へと転換させる上で有利に働くものである。結果として、成績優秀者に大きな報酬アップをもたらすのである。

 <<従業員奨励の長期化、報酬の有価証券化 >>

 その目的は、基幹人材や技術者を慰留し、穏健なチームを作ることである。これには、従業員による株式所有計画(ESOP)、SARs、ファントムストック、ストックオプション等がある。

 <<報酬とチームとの関係を重視>>

 チームを基礎としたプロジェクト進行、チームごとの業務進行方式は現在徐々に流行しているが、これに合わせてチームごとに特化した奨励方案や報酬計画を作成すべきである。その奨励効果は個人を対象とするものより高く、特に少人数のチームに対する奨励に適する。また、組織の協調を促す作用も持ち合わせている。

(3)報酬の細分化

 報酬を細分化するにはまず報酬構成を細分化することである。かつての計画経済時代のような、単一的で死に体の報酬システムは既に現代企業のニーズから外れており、多元的、多層的でフレキシブルな報酬システムに取って代わられている。

 次に、専業従業員の報酬を職位にあわせて専門的に設定することである。例えば営業職は会社に対して巨大な影響力を持つし、専門職の従業員は排他性が大きく、アルバイトの雇用も特殊なものである。これらの従業員に対する報酬システムを構築する際には、他部署と同じ報酬システムを用いるべきではない。

 この他、評価指標の制定においても細分化を行うべきであり、画一的評価を避けなければならない。例えば、職務評価、業績考課システムを制定する際は、各職位各役職にそれぞれ合った指標を設けるべきである。

 <<報酬制度の透明化>>

 報酬の支払いを機密にするか透明化するかは、大きな議論の存在するところである。最近の資料を見てみると、報酬制度の透明化を求める声が段々と高まってきている。なぜならば報酬制度の隠匿は従業員のモチベーションに大きな打撃を与えるからである。また、報酬制度を隠匿している企業では次のような減少がよく起こる。従業員が強い好奇心をもって他従業員の賃金を聞き出し、秘匿のはずの賃金が結果的に透明化してしまうのである。厳格な機密保持制度をもってしても、この現象を防ぐのは難しい。機能しない機密保持制度は、透明化した報酬制度に及ばないのである。

 報酬の透明化を実行することで、企業は従業員へこのようなメッセージを送ることができる。「会社の報酬制度は隠匿する必要のないものである。報酬の高い従業員には相応の理由があり、低い従業員には相応の不足がある。従業員がその公正さに目を光らせる事を、我々は歓迎する。もし報酬に不満がある者は、いつでも意見を申し出るように」。報酬制度の透明化は公平公正公開の原則に則り、具体的に以下のような方法で行う。

 (1)報酬制定において、従業員を参加させる。報酬制定の際、各部署長以外の従業員の代表者を一定数参加させる。

 (2)職務評価は、できるだけ簡単で理解しやすい方法を採用する。

 (3)従業員へ報酬制定過程の詳細を文書で公開する。

 (4)制定された報酬制度は詳細に記載し、従業員の誤解を招かない様にする。

 (5)従業員向けの「目安箱」を設置し、報酬への疑問に随時答えていく。

(4)弾力的で選択可能な福利制度

 企業が従業員福利のために投ずる資本比率は比較的高いが、その一部は従業員に軽んじられ、往々にして賃金報酬ほど喜ばれないものである。しかも、従業員がその福利厚生を好むか否かは個によるところが大きいのである。この問題を解決するために現在よく用いられている方法は、福利厚生を従業員自身に選択させ、規定の範囲内でカスタマイズさせるやり方である。

(5)報酬情報は日増しに重要なものとなっている

 外部情報とは、同一の地区、業種、性質、規模の企業の報酬水準、報酬システム、報酬傾向など報酬調査によって得られる情報である。企業が報酬額を決定及び調整する際に、参考となるものである。

 内部情報とは、従業員の満足度調査と合理化への提案を指す。従業員満足度調査の効果は報酬への満足と一致するとは限らないが、従業員の報酬管理への提議と不満を抱いている事項を把握することができ、報酬制度制定の基礎とすることができるのである。