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【判例】産前産後の女性従業員の年度考課(2014年3月25日)

【判例】産前産後の女性従業員の年度考課による降級により、基本賃金を引き下げることはできるのか?(2014年3月25日)

案例:

 2002年10月、呉さんはA社と労働契約を締結し、秘書を任されていた。2009年12月20日、呉さんは第一子を出産し、併せて「一人っ子父母光栄証」を受け取った。2009年度、会社は呉さんの業績考課において、2010年1月よりそれまでの三職等三級から二級へと降格させ、基本賃金も1207.8元から1148.4元へと引き下げてしまった。2010年4月1日、呉さんは産休から戻り、同年7月、A社は一方的に呉さんを解雇した。

 2010年9月、呉さんは労働仲裁を申し立て、会社側へ控除された賃金及び経済補償金の支払いを求めた。仲裁委はこれを認めたが、A社は、賃金引下げが自社の経営権の行使であるとし、法院へ提訴した。

焦点:

 使用者は業績考課により産前産後の女性従業員の基本賃金を引き下げることができるか?

判决:

 一審では、使用者は自主的に賃金及びその分配方法を決定する権利を有するため、A社の呉さんに対する賃金引下げは認められるとし、呉さんの訴えを認めなかった。

 二審では、2009年3月から2010年6月までの間、呉さんは産前産後の時期にあり、この期間、A社は「女性従業員労働保護特別規定」等の法律法規を遵守しなければならず、基本賃金を引き下げることはできないとした。A社は2009年下半期の業績考課から2010年1月より呉さんの職級のみならず基本賃金をも引き下げており、これを関連法規に違反する行為として、呉さんの訴えを認めた。

分析:

 「労働法」第四十七条には「使用者は生産及び経営の特徴及び経済的利益に応じ、法に基づく範囲で賃金分配方法及び賃金水準を決定することができる」と規定されており、また「女性従業員労働保護規定」第四条には「妊娠期、産期、授乳期にある女性従業員の基本賃金を引き下げ、または労働契約を解除してはならない」とあるが、二者は矛盾するものではない。使用者は職位考課、賞罰規定などの規則を制定する際、必ず産前産後の女性従業員の権益を保護しなければならず、その約款をもって産前産後の女性従業員の権益を明確にし、これを制度化、規範化しなければならないのである。

 本案件において、使用者は年度業績考課を行うに当たり、ただ考課指標と達成状況だけを重視し、産前産後の女性従業員の特殊な身体的状況を無視していた。基本賃金には各種手当などの福利待遇が含まれており、ゆえに使用者はそれを引き下げることが出来ないのである。この原因を突き詰めると、使用者側に産前産後の女性従業員を管理、保護する規定が無い一面と、産前産後の女性従業員の、自身の生理的、身体的状況の管理者への報告が不十分であり、負担の軽い業務への配置転換及び業務量の軽減により、担当業務と業績考課目標達成を得られなかった一面があるのである。