「史上最も驚くべき休暇通知」より休暇を解説
(女性社員「三期(妊娠・出産・育児期)」権益10大争議案例 - 中智法案解説 - 人的資源)
春節間近に、雅矛爾グループ(中国大手アパレル企業)の子会社、寧波雅矛爾日中紡績印染有限公司(以下、雅矛爾公司)は以下のような通知を出した。「春節休暇前の5日間(今年1月26日から30日まで)と春節休暇後の5日間(2月7日から11日まで)に休暇を取得する従業員は、1日当たりの給与の3倍を一日休暇ごとに差し引く」。これは「史上最も驚くべき休暇通知」と言われている。
明らかに「労働法」に違反するこのような通知に対し、雅矛爾公司の責任者は、全ては受注と「雇用の荒さ」の切迫によるもの、と表明している。毎回年末が近づくと、往々にして紡績業界では受注が膨れ上がる時期で、会社の受注によるプレッシャーが大きく、緊急の状況下により、春節前後の休暇に関し3倍の給与差し引き案が決定された。現在雅矛爾公司は既にこの「驚くべき」通知を取り消し、会社董事長の徐磊もまた従業員全体に対し、詫び状を出している。
会社が春節休暇前後における勤務日の厳格な考課・規律を強化し、正常な生産秩序を維持することについて、頭から否定することではないと言うべきである。先の休暇通知を見ても分かる通り、会社は既に国家規定に従い春節期間は従業員に休暇を与えている。もしも従業員が春節の前後にきちんと出社しない場合、間違いなく企業の生産経営に影響を及ぼす。しかし企業の規則制度は法律法規に違反してはいけない。具体的な操作においても通り一辺にはいかないので、従業員の休暇における実際の状況に基づいて取り計らうべきである。
1.従業員のどのような休暇に対し、雇用側は許可すべきか?
従業員の春節前後の休暇に対し、雇用側が許可しなくても良い、或いは一時的に許可しないもの、また雇用側が許可すべきものを最初にはっきりさせておくべきである。
「従業員有給年次休暇条例」で以下のように規定している。①雇用側は生産、業務の具体的状況に基づき、また従業員本人の意志を考慮し、従業員年次休暇を統一的に計画し案配すること②年次休暇を案配する際、もちろん従業員本人の意志を考慮すべきであるが、従業員が自由に年次休暇を決定できるといった意味ではない③「労働法」の規定に基づき、雇用側が労働者の休息日に仕事を案配した場合、代休を案配すべき、或いは規定に基づき残業手当を支払うべきである。これはつまり、雇用側は法定義務を履行しているという前提で、従業員の年次休暇と残業代休を統一的に計画して案配する権利を有する。
従業員の休暇申請もまた雇用側の規則制度を厳守すべきで、雇用側の関連部門に申請書を提出し、雇用側の指導者の同意許可を経て休暇をとることができる。もしも雇用側の許可を得ずに私用で休んだ場合、雇用側は一般的に無断欠勤の処理を行うことができる。しかし、もしも従業員が実際に重要な私用でかつ申請手続きを履行できない場合、雇用側は事後の休暇申請手続きを許可するべきである。
親族訪問休暇とは、従業員が2箇所に分居しており、公休日に配偶者或いは父母と集まることができない者の休暇期間である。国家機関、人民団体(共産党指揮下の社会活動組織)、全民所有制企業(国有企業の一種)、事業単位(国家機関関連の公共サービス機関)の仕事に就く従業員は、国務院公布の「従業員の親族訪問休暇待遇に関する規定」に基づき、親族訪問の待遇を享受できる。では雅矛爾公司のような民間企業、また合資企業、外資系企業などの従業員は親族訪問休暇を享受できるのか。これら雇用側の規則規定がどのように規定されているのかが重要である。雅矛爾公司の従業員は、春節前後の休暇申請に、親族訪問休暇を提出している可能性は大きくないと推定される。
婚葬休暇とは、従業員本人の結婚及び従業員の直系親族の死亡時に享受できる休暇期間である。国家の関連規定によると、従業員本人の結婚或いは従業員の直系親族(父母、配偶者、子女)の死亡時に、具体的状況に基づき、雇用側の総務責任者の許可を得て、状況により1~3日の婚葬休暇を与える。外地での直系親族死亡時に従業員本人が外地の慶弔の儀式を執り行わなければいけない場合、路程の遠近により別で路程休暇を与えることができる。
婚姻休暇を享受できる条件として、従業員が「婚姻法」規定の婚姻年齢に達していること、また配偶者との婚姻登記の手続きを行っていること。これ以外に各地で晩婚休暇も規定されている。例えば雅矛爾グループ会社所在地の寧波市の規定では、従業員の晩婚による婚姻休暇は12日の増加で、この場合婚姻休暇と晩婚休暇を併せると15日になる。北京市規定の従業員の晩婚は、国家規定の婚姻休暇以外に、7日の休暇増加を奨励している。ある地域、例えば上海市の規定では、従業員の妻の父母或いは舅姑が死亡した時も、忌引休暇と路程休暇を与えることができる。しかし、ある地域、例えば雅矛爾グループ会社所在地の寧波市は類似した規定は無い。
以上のことから、例えば雅矛爾公司の従業員が春節前後の営業日に婚葬休暇を提出した場合、会社は原則として許可すべきである。しかし婚葬休暇は1日か3日、路程休暇もあくまでも数日、従業員の妻の父母或いは舅姑が死亡した時には婚葬休暇をもらえるかどうかといった問題の中で、雇用側は具体的に操作する際、事情を斟酌し処理する権利を有する。雇用側従業員側双方が互いに考慮し合い、従業員は婚姻休暇を申請する際は業務が忙しくない時期に、会社は努めて人間性ある操作を行うべきである。
病気休暇とは、従業員が労災或いは非労災による負傷により、医者の判断を経て、雇用側の許可により仕事を停止して病気治療、休息する期間である。従業員が病気休暇をとるには雇用側の許可が必要であるが、雇用側の病気休暇の申請に対する審査は一般的に形式上審査するのみで、病状の重さ、休息の必要性に関して、関連する専門医療知識と技術が無い場合は、実質的審査は非常に難しい。もしも企業が病状に対し疑いを持つ場合は調査が可能で、公的専門機関に鑑定を申請することもできる。しかし、従業員が病気休暇を申請し、手続きもきちんと行っている場合、会社側に許可しない理由は無い。
2.従業員の休暇期間の給与はどのように支給すべきか?
従業員の休暇申請に対し、もしも雇用側が既に許可を与えている、或いは許可を与えるべき範囲内である場合、雇用側は規定に基づき従業員休暇期間中の給与を支給すべきである。国家は休暇期間の給与待遇について規定しており、雇用側の待遇基準は国家法定基準を下回ってはいけない。
年次休暇、代休、親族訪問休暇、婚葬休暇などは全て有給休暇であり、従業員が国家規定に基づき休暇をとる場合、雇用側は正常出勤処理に基づき、休暇期間中の給与を本人給与基準に従い支給すべきである。
従業員が病気休暇を申請する場合、雇用側は規定に基づき病気休暇期間の給与或いは病気休暇救済費を支給すべきである。現在各地域ともに、病気休暇給与の最低基準は最低賃金基準の80%を下回らないよう規定している。しかし、具体的な支給基準は各地域で異なる。「浙江省企業賃金支給管理弁法」で以下のように規定している:「労働者が疾病或いは非労災による負傷で労働を停止する期間、かつ規定の医療期間(病気休暇中に労働契約を解除できない期限)内は、企業は国家・省の規定、或いは労働契約の約定、或いは法制定に基づいた会社内部給与支払い制度の規定に従い、病気・傷害休暇中の給与を支払うべきである」。
これにより、雅矛爾公司は法制定に基づいた会社の規則制度、或いは労働契約、集団契約(団体協約)の約定により病気休暇中の給与を支払うことができる。北京市もまた、企業が労働契約或いは集団契約の約定に基づき、病気休暇中の給与を支払うよう規定している。江蘇、安徽、広東省も、労働契約の約定に基づき病気休暇中の給与を支払うことを認めている。上海などの地域は、従業員の勤務年数と給与額に基づき、一定の比率により病気休暇中の給与を支払う。深センでは本人の標準給与の60%を下回らない金額を病気・傷害休暇期間の給与として支払うよう規定している。陝西では医療期間内の給与は、労働契約に約定の給与の70%を下回ってはいけないと規定している。
私用休暇期間は、一般的に雇用側が給与を支払う法定義務は無いが、私用休暇以外の給与を差し引かないよう注意が必要である。「浙江省企業賃金支給管理弁法」で以下のように明確に規定している:「私用休暇を申請する労働者に対し、企業は私用休暇期間中の給与を支払わないことも可能である。しかし、私用休暇以外の給与を差し引いてはいけない」。よって、雅矛爾公司の従業員が1日の私用休暇で3日分の給与を差し引かれるのは、違法である。
しかし、従業員の休暇期間における給与は一体どのように支給すべきなのか?計算方法の違いにより、結果も異なる。仮に、雅矛爾公司の某従業員の月給基準が2175元である場合、労働・社会保障部「従業員年間月平均労働時間及び賃金換算問題に関する通知」に基づき、この従業員の日給基準は月収÷21.75=100元。もしもこの従業員が今年の1月26日から30日の5日間と、2月7日から11日までの5日間を私用休暇とした場合、この従業員の1月と2月の給与はいくらであるべきか?
方法1:月給=日給基準×当月出勤日数。この従業員の日給基準は100元、1月の出勤日数は16日、法定休暇の1日を加えて、当月の出勤日数は計17日で、1月の給与は1700元となる。同様の方法で算出した2月の給与は1400元。
方法2:月給=月給基準-(日給基準×休暇日数)。この従業員の月給基準は2175元、1月と2月に各5日間の私用休暇、2175元-(100元×5)=1675元で、1月と2月は共に1675元。
以上2通りの方法に対し、雇用側は規則制度の中で自社の意志で規定することができる。方法1では、従業員の1月の給与は方法2よりも多いが、2月の給与は方法2よりも少なく、1年でみると実質上ほとんど差が無い。問題は、雇用側の規則制度が操作方法を明確に統一しているかで、「左に行ったり右に行ったり」して不公平になってはいけない。
3.理由無く欠勤した従業員に対し、いかに処理すべきか?
以下のような質問があった:「もしも従業員が規定に無い休暇を申請した場合、或いは雇用側が法に基づき従業員の休暇申請を許可しなかったにも関わらず、従業員が休暇をとり無断欠勤となった場合、雇用側は処罰として多めに給与の差し引きを行うことができるのか?」。実際のところ、このような方法は法的リスクがある。
現行の有効な労働法律に従うと、雇用側は従業員に対し罰款(罰金)を科すことはできない。「立法法」と「行政処罰法」で以下のように規定している:「財産の処罰に対してのみ、法律、法規、規則制度により設定することができる。罰款は財産罰(行政処罰の一種)の範疇に属し、よってこの項目における規定は、国家立法機関と政府行政部門のみが制定できる。専門家はこう指摘する。「企業は営利目的の経済組織で、国家立法機関や政府行政部門ではない。規則制度の中に罰款条款を設定する権利は無い」。
しかし、従業員の一方から言っても、理由無く欠勤することは一種の規則違反行為だと認識すべきである。雇用側は給与の差し引き以外にも、法に基づき制定した規則制度により、処分を行うことができ、状況が重大であれば労働解除も可能である。「労働契約法」では、雇用側の規則制度に大きく違反した場合、雇用側は労働契約を解除できると規定している。
もちろん、雇用側は給与構造を改良し、例えば複合給与制の設計を行うのもよい。給与に多くの組成部分を含め、固定給には、例えば役職、職務、技能給などが有り、また浮動的なものには、例えば皆勤賞、成果給など。理由無く欠勤した従業員に対し、1日の欠勤に3日分の給与差し引きはできないが、彼らに「皆勤賞」を支給しないことができる。このようであれば、国家の法律規定に符合し、皆勤を保持する従業員に対しても一種の奨励となる。
しかしながら、この種の方法を採用するにあたり、前提としては従業員の標準給与に一定の吸引力があること。なぜなら、労働者は正常な労働を提供するだけで、最低賃金基準より下回ることのない報酬を得る権利を有する。もし、従業員の給与の中に「皆勤賞」などの項目を設ければ、給与基準は国家規定の最低賃金になることはない。
同時に、雇用側の行政部門は総工会と従業員平等協議を学ぶべきであり、その上で制定した方案は信用性がある。「労働契約法」に基づき、雇用側が労働報酬、休息休暇といった労働者の切実な利益に直接関わる規則制度或いは重大事項を制定、或いは改修する際は、従業員代表大会或いは従業員全体との討論を経て、方案と意見を提出し、総工会或いは従業員代表と平等に協議し確定するべきである。しかも、規則制度と重大事項の決定実施の過程において、総工会或いは従業員が不適当と見なした場合は、雇用側に意見を提出する権利を有し、協議により改修し完成させることとなる。また雇用側は、労働者の切実な利益に直接関わる規則制度と重大事項の決定を公示、或いは労働者に告知すべきである。
雅矛爾公司の董事長、徐磊は事後にこう表明している。「もう二度と春節前後の休暇で3倍の給与を差し引き労働者の権益を侵害するような事件が起こらないよう、他の企業への教訓となることを期待する」。このような態度は間違いなく有益である。しかし根本的な話をすると、企業は完璧な給与の供決構造、増加構造、支払保障構造を構築することで初めて、規則制度の実質の公平さを保証できると同時に、「奨勤罰懶(勤勉を奨励し怠慢を罰する)」効果も果たし、雇用双方が「共益」に達することができる。実際のところ、休暇制度であれ、報酬案であれ、全て企業の民主的マネジメントレベルを反映している。
出所:中智上海経済技術合作公司
人的資源
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